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キャラクター名
おーりん
属性
真なる中立(TN)
プレイヤー名
ふぉっくす
最終更新
2023/09/29 16:21
クラス
ローグ《ファントム》
レベル
13
経験値
 
神格
 
種族
オウリン
サイズ
小型
年齢
 
性別
身長
'" cm
体重
lb. kg
パーティ・所属
 
メモ欄
 
イニシアチブ 【敏捷力】 その他
5
5
 
AC 敏捷 防具 その他
17
10
5
2
 
 
移動速度 基本 防具 アイテム その他
40ft./8sq.
40
 
 
 
特殊な移動
 
能力値
現在値 能力値 能力値
修正
8
【筋力】
STR
-1
20
【敏捷力】
DEX
+5
10
【耐久力】
CON
 
17
【知力】
INT
+3
14
【判断力】
WIS
+2
12
【魅力】
CHA
+1
インスピレーション
 
習熟ボーナス
5

セーヴィング・スロー
  セーヴ  能力修正  その他  習熟ボーナス(習熟)
【筋力】
-1
-1
 
 
【敏捷力】
5
5
 
 
【耐久力】
0
0
 
 
【知力】
3
3
 
 
【判断力】
2
2
 
 
【魅力】
1
1
 
 

ヒットポイント
 
最大HP HP現在値
68
68
一時的HP ヒットダイス
 
1d8*13
 
死亡セーヴ
成功 □□□ 失敗 □□□
技能:SKILLS
技能値 技能名 能力 習熟 その他
1
〈威圧〉
INTIMIDATION
【魅】1 
 
 
2
〈医術〉
MEDICINE
【判】2 
 
 
-1
〈運動〉
ATHLETICS
【筋】-1 
 
 
10
〈隠密〉
STEALTH
【敏】5 
5 レ
 
5
〈軽業〉
ACROBATICS
【敏】5 
 
 
2
〈看破〉
INSIGHT
【判】2 
 
 
1
〈芸能〉
PERFORMANCE
【魅】1 
 
 
3
〈自然〉
NATURE
【知】3 
 
 
3
〈宗教〉
RELIGION
【知】3 
 
 
2
〈生存〉
SURVIVAL
【判】2 
 
 
1
〈説得〉
PERSUASION
【魅】1 
 
 
3
〈捜査〉
INVESTIGATION
【知】3 
 
 
2
〈知覚〉
PERCEPTION
【判】2 
 
 
5
〈手先の早業〉
SLEIGHT OF HAND
【敏】5 
 
 
2
〈動物使い〉
ANIMAL HANDLING
【判】2 
 
 
1
〈ペテン〉
DECEPTION
【魅】1 
 
 
3
〈魔法学〉
ARCANA
【知】3 
 
 
3
〈歴史〉
HISTORY
【知】3 
 
 

受動【判断力】《知覚》
PASSIVE WISDOM PERCEPION
12
 
攻撃と呪文発動
ATTACKS & SPELLCASTING
攻撃 攻撃
ボーナス
ダメージ 備考
ハンドクロスボウ+2 
 
 
 
 
ハンドクロスボウ+2+1 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
違和感を感じるほどに白く、広い空間にて俺はこう告げられた。

ーーー木下彰人さん、残念ながらあなたは死んでしまいました。

だろうな、と。
俺は心の中でそうつぶやく。
動揺はない。
何故なら自分でも先の死を理解していたから。
それに、そう。
考えたり整理したりする時間はたくさんあった。
本当に、たくさんあった。

…後ろをちらりと見やる。
おびただしいほどの長さをなす死者の列。
さっきまで俺はあそこに並んでいたんだと思うと大変に感慨深いものがある。
詳しい時間はわからないが随分と長かったと思う。
遊園地の待ち時間など比ではなかった。

ーーー木下彰人さん、あなたは生前、立派に人としての務めを果たしました。

いやぁ、日本人はよく列に並ぶが、まさか死んでからも並んでいたとはなぁ。
女神の言葉を聞きながらそんなことを考える。

ーーーよって輪廻転生、生まれ変わりを許可します。

女神はにっこりとそういうと、手元の紙にハンコをポンと押した。
紙は浮き上がり、くるりととりでに巻かれ、赤いひもが結ばれる。
短い時間その場で浮遊し続け、ふいにぱっと消えた。

俺の足元が輝きだす。

そういえば今更だけど、神も転生も存在するんだなぁ。
そんなことを考えながら俺はその場から姿を消した。


……。

せんぱーい、お疲れ様でーす。
あら、もう交代の時間かしら。
ってかせんぱい、いいんですか?
え、なんのことかしら?
ーーーさっきの魂、洗濯せずに転生させちゃってましたけど。
…。
…。
…やばいわね。

彼のいなくなった天界にて、そんな会話が虚しく交わされ、次を待つ死者の列にかき消されていった。



::::::::::::::::



「おぎゃぁ、おぎゃぁ」
「ほら、元気な赤ちゃんが産まれましたよ。この子はーー男の子です」
「ああ、無事に生まれてよかった。お前もよくやったな」
「ええ…!」



ああ、よかったよかった。
無事に生まれることができて。

ところで、そうか。
テレビやネットで、生まれて間もない赤ん坊には前世の記憶が云々といった話があったが。
転生があるんだ。
あの話も本当だったんだなぁ。

そんなことを考えること6年ほど。



未だ前世の記憶は残っていた。
いや、記憶残りすぎじゃない?
いつ消えるものなんだ?

「ルー君、ご飯よー」
「はーい」

あ、どうも。
俺はルー君というらしいです。

そういえば些細なことなのだが。
柵付きのベッドから解放され、ある程度自由に行動ができるようになった時に、気が付いたことがある。
窓からちらと見える景色が明らかに地球のものではないのだ。

何度目かわからないが俺は自室の窓から空を見上げる。
、そこにはきれいな飛行機雲…なんてかわいいのもではなく、空飛ぶ巨大なドラゴンの灼熱の吐息。
すごい、お空が燃えてるや。

女神は輪廻転生と言っていた。
どうやら魂はあの世界だけでなく、異世界でも使いまわされるらしい。
俺はあっけにとられながらも、静かに心を躍らせていた。
何故かは知らないが、せっかく前世の記憶を持ち越しているんだ。

ーーーせいぜい今世を謳歌しようじゃないか。「やーい、まぬけー!あはははは!」
「まぬけまぬけー!あははー」

今世を謳歌したい。
そう思っていた時期が、私にもありました。
しかし、齢14歳にて私ルーイはこの世界を知りました。

狂気的な笑いを浮かべながら俺に歩み寄るのはこの村の同年代の子供。

あそこまで平和でな国でもついぞ無くならなかった差別的ないじめ。
まぁ詳しくは省くが、人とは違う身体的特徴を持ったものに正面からぶつかり続ける強い風。

俺には、魔力がない。

出力できないとか、漏れ出てしまうとかそんな優しいものではなく、
この体に魔力適性がない。

分かりやすく電気にたとえるならばそう。
常人は発電機能付きの電池。
俺は只の鉄の塊。

エネルギーを作ることも蓄えることもない。

つまりはまぁ、俺は。
前世風に言えば、一般人。
そのことを理由にいじめにあっていた。

いやぁ。
日本のいじめは優しかったんだなぁ。
この世界に来てから新しい発見がいっぱいだ。

タバコの火を押し付けたり、服をひん剥いて手足を縛り付け真冬の川に流したり。

今思うと懐かしい。
昔はよかった。

今なんかほら。
もう魔法なんてあるからさ。
ひどいことになるわけだ。

子供なんだからそこまでのことはしないだろうって?

いやいや、前世ではしなかったんじゃない。
出来なかっただけだ。

非力な腕力に小さな体。

この世界ではそんな弊害はほとんど無い。

腕の代わりの魔法。

子供だから魔法が弱い。
初級魔法しか使えない。

ーーーなんてそんなルールは存在しない。

この世界の魔法は人間が使うんじゃない。
先ほどたとえた通り、電池と同じだ。

人間の体は電気を作って貯めておくだけ。
では機械はどこに。
動力部はどこだ。

答えは精霊、と言われている。
いまだ誰も観測かなわぬ存在、精霊。

人はそれらに指示し、エネルギーを与え、魔法を出す。

つまりエネルギーが足りさえすれば、鍛錬なしに強力な魔法が使えるってことだ。


「聖霊よ、わが眼前の不浄に業火を灯せ」

ほら、今日も来た。
俺の衣服が激しく燃え上がる。
熱い。
痛い。
俺は慌てて服を脱ぎ捨てる。
上半身はやけどを通り越して爛れ、出血していた。

「おいおいルーイ、逃げちゃぁダメだろう?」
「…万が一でも俺が死んだらまずいんじゃないのか?」
「ははっ、何を言うかと思えば」
「あはは、昨日のあれで頭飛んだんじゃないのー?」
「確かに殺しはまずい。だが、死ぬ前に回復魔法をかければいいだけだろう。さぁ、次は水か、風か。どっちがいいと思う
?ルー君?」

俺はこっちの世界に来てから回復魔法が大嫌いになった。


何時間経ったか。
ドサッ。
土の味がする。
ここは、近くの山の中か。
例によって、血は出ていない。
奴らの魔力が底をつき、今日のいじめは終了した。
もし仮にこの瞬間俺がとびかかれば、1対2とはいえ勝てる可能性があるかもしれない。
だが、そんなことをしても次の日しっぺ返しを食らうだけだ。
これを止めるには逃げるか、
ーー殺すしかない。



はっ、元健全な日本人にそんなことできるわけないだろう。
逃げの一手だよ。
こんな環境に置かれてなお日本人を貫こうとする自分に自傷の笑みがこぼれる。
うつ伏せだった体を転がし、空を見る。
ああ、もうこんな時間だったのか。
空は暗く、その中で幾万の星が輝いていた。


「…意味わかんねぇ」

それは何に対しての言葉だったのか。
自然と口を衝いて出た言葉だった。
どうしよう。
このまま逃げてしまおうか。
このまま山の反対側まで行って、隣の町に行こうか。
ひょっとしたら、こんな自分でも優しい人間が拾ってくれるかもしれない。

ぐぅ。

腹が鳴った。
はは、ダメだ。
1日食わずに山なんか越えられるかよ。

「はぁ」

ため息を一つつく。

ふと、左から水のせせらぎが聞こえてくる。

ああ、川が近くにあるんだな。

とりあえず、水でも飲もう。
ズシリと重い体を持ち上げ、川に向かってふらふらと歩きだす。

暗闇で、2つの点が見えた。

『ピャッ』

鹿だ。
つい今まで水を飲んでいたのだろう。
鹿は慌てて逃げ出す。
それはもう全力で。
当然だ。
彼は今、命のかかったサバイバルゲームの真っ最中。
別にこっちは襲う気なんかないのに。
あーあ、風魔法を使って加速なんかしちゃって…
俺も魔法が使えれば、彼みたく身を守れーー

ーーああ、魔法が使えるんだったらいじめなんて起きないか。

俺は肩をすくめ水際に膝をつく。
両手をお椀の形にして川の水をすくった。
手のひらには、ひどい顔が映っていた。
おい、誰だよ。
この泣き虫は。

「…なぁ」

どうしてお前だけ使えない。
見ただろ、鹿でさえ使えるんだよ。
この世界の必須スキル、いや。
スキルでさえない。
歩くことや、呼吸することと同じ、出来て当たり前の事なんだよ。
どうしてお前はそれが出来ないんだよ!

俺はその水を飲むことはなく、自分の顔にパシャリと叩きつけた。

ほんとに、なんでだろうな。

「…なぁ女神様。もし聞こえてるんだったら助けてくれよ。」

あんたが寄越した魂だろ?
なんで動物にも与えられるものが俺にはーー

ーー…?

なんだ、今。
ふと脳裏をかすめた違和感。
何がおかしかった?
体を止める。
余計なことを考えるな。
なにか、大事な…。

「…どうして鹿が魔法を使えるんだ」

ついぞ違和感の正体を見つける。
だって、おかしいだろ。
魔力を貯められるのはおかしくない。
その次。
どうやって精霊に指示を与えている…?

動物にも言語があるのか?
いや、仮にそうだとしても、あの鳴き声から魔法の発動まで随分と時間が空いていた。
あの鳴き声は魔法とは関係ない。
では無詠唱とか…?
精霊と仲良くなれば以心伝心ってか?
冗談。
だったら人間なんていう貪欲な生き物はこぞって精霊とお近づきになろうとするだろう。

明らかな矛盾。
精霊に指示をしなくてはいけないのに、
あの鹿は指示なんてしてなかった。

「…もしかして」

自分の声を聴いて、少し驚いた。
お前、久しぶりに聞いたぞ。
そんな希望がにじみ出たような嬉しそうな声。

ふと、水面を見て気が付く。
膝をつき、手を合わせるような姿。
まるで神に祈っているみたいじゃないか。

はは、女神様、この手椀に希望を少しこぼしてくれたのか?

「もしかして、魔法にはもう一つ、別な発動方があるんじゃないか?」

そういえば、今までこの山には何度も登ったことがあるが、動物は何故か、風魔法しか使っていなかった。

いや。
使わなかったのではなくーーー

ーーー使えなかった?

限定的に風魔法のみを使えるようになる方法?
もしかしたら、俺のこれからの人生ががらりと変わるかもしれないんだ。
考えろ。

言い換えると、
…特定の結果のみを出力する機械?
工場、量産。
…型?
体内に既に決められた指示書がある…?

ーー魔法陣。
懐かしい知識が引っ張り出された。

「はは、…くそ」

乾いた笑いが漏れる。
結局、何も変わらないじゃないか。
魔力を持たない俺には、どうすることもできない。

あきらめよう。
魔力がなければ魔法は使えない。
もともと解っていたことじゃないか。

俺は水を再び川からすくう。

ああ、もしかしたらこの考えをどこかに論文として出せば小遣い稼ぎなんかできるかもしれない。」

ーーおい。

「それどころか大金が入って、有名人になったりして…?」

ーーやめろ。

「はは、そしたらあいつらを見返せるな。」

ーーお前はまたそうやって逃げるのか?

「そのときはこう言ってやるんだ。ざまぁみろってな」

ーーおい!!!

「だったらどうすればいいんだ!!?」

俺は気が付くと、手のひらに映る俺に叫んでいた。

「もう、終わりなんだよ!
前世から自殺して逃げた奴が!?
異世界に転生したら大成功しました!?
そんな都合のいい話あるわけないだろ!!」

ーーだったら、なんだ。また逃げるのか?

「…」

ーーまた、自殺するのか?

「…」

ーーそりゃあいいかもな。なんてったってこんな世界でも殺しは罪。あいつらに一泡吹かせられる。

「…」

ーーそれで?お次はもっといいところに生まれ変わりますようにってか?

「…うるせぇよ」

ーーそんな都合のいい話あるわけないだろ!

「だまれ」

ーーお前は次も、その次も、その次も、何度も何度も逃げ続ける!安心しろ、他ならぬ俺が保証してやる!どうせ何度も繰り返すんだ。サクッと死んで、さっさと次の世界に行こうぜ?

「黙れって言ってんだよ!俺は今度こそ諦めねぇ!逃げねぇ!俺はなぁ、この世界に来てから誓ったんだよ!今世を謳歌するって!楽しく生きるんだよ!!ふざけたこと言ってんじゃねぇ!!!」

ーーだったら、もうわかるだろ

「…ああ」








ーー魔法陣について、もう少し考えてみるべきだ。
「あいつらを、殺してやる」



………。


は?


ーー物騒すぎるだろ、お前本当に日本人か?

「お前こそどうした?魔法はもう無理だって、さっき解っただろ」

ーーまぁまずは俺の話を聞け。それから考えよう。俺はお前で、お前は俺なんだ。あいつらと違って、対話は出来るだろ?

「…卑怯な言い方しやがって」

ーーはは、それが理解できるならもう落ち着いてるみたいだな。

「うっせ」

ーー精霊は魔法を行使する時、どこから魔力を吸い上げる?

「そりゃあ…精霊に指示した奴からだろ」

ーーなら、魔法陣に関しては、それをどうやって精霊は判別してるんだろうな?

「ッ!そうか!」

ーー指示した奴ではない。じゃあ、どうやって?

「ーーーただ、近くにある魔力。
だったら、魔法陣さえ用意できれば、
接近さえすれば他人の魔力を使用することが、可能…?」






ーーいや?

「なんだお前」

ーーお前が勝手に走っていったんだろ。第一、もしそうならお前が詠唱したら隣にいる奴から魔法が飛び出ることになる

「いや、まぁ、そうか…」

ーーおとなしく最後まで聞け。おそらく、魔法陣には、既に魔力が付随してるんだ。

「既に、付随…」

ーーよくある魔石、とかいう物があるのか、魔法陣自体に魔力が流れ込んでいるのか、それとも別の方法をとっているのかは判らないがな

「てことは…」

ーー最後まで聞けと言ってるだろ。お前はいろんなものに希望を持ちすぎなんだよ。過度に期待して、裏切られて、発狂するのはいつものお決まりパターンだろ。

「…そう、だな」

ーーよし。まぁ、期待はするなってことだ。この仮説が間違っている可能性はもちろんある。まずは適当な動物を捕まえて解体してみんと判らん。やれ。

「動物なんて捕まえたことねーよ」

ーー俺はお前だがお前の体は俺のじゃねぇ。実際動くのはお前だよ。いいからやれ。帰っても地獄しかないんだ。だったら全部わかるまで山に籠ろうぜ。…お、こんなところに時間がたっぷり落ちてるじゃねーか。狩りの練習にぴったりだな!

「…我ながらふざけた野郎だ」

ーーでも気をつけろよ?回復魔法使えないんだから

「笑止。あんなクソ魔法使えたって使わんわ。」




ーーさて。
「さて。」



俺は、手のひらの水をグイっと飲み干す。


「行くか。」
狩り。

前世ではいろいろな道具があった。
スリングショットやボウガン、原始的な弓やライフル散弾銃。
ブーメランなんてものも使われていた。

俺は必死に14年前の記憶を呼び起こす。

しかし、浮かぶものは全て作成難易度や使用難易度の問題にぶち当たる。

ああ、原始の時代では長棒に尖った石を括り付けて槍にしてたんだっけ?

ーーできるかボケ!!



…やはり、罠か。


実は最初から思いついてはいた。
だが。

ぐぅ

「腹が減った…」

罠は獲物がかかるまで待つ必要がある。
どれくらいでかかるのかはわからないが、ポンポン捕れるということはないだろう。

果たして、俺はそれまで生き延びられるのか…
というか、罠を無事完成させることができるのか…

不安は残るがそれしかないんだ。
やろう。

じゃあ、なんの罠を作るのか。
ぱっと思いつくのは箱罠とくくり罠。
この2つくらいだった。

箱罠は文字通り箱の中に獲物を誘導し、ふたを閉じ捕まえる罠。

くくり罠は、あれだ。
アニメでよく見る木の幹に先端を輪状に結んだロープを括り付けて、輪の中に獲物の足が入った瞬間びよーんと伸びてぶら下げる罠。

箱罠については作成に問題がある。
獲物が中に入ると、もちろんの事、暴れ散らかす。
それはもう、激烈に。
そして、問題はそれに耐えられるだけの素材を手に入れられる気がしないのだ。

じゃあくくり罠を作るかと。
そうは簡単なことじゃない。
くくり罠は獲物をぶら下げるのだ。
ならそれに耐えられるロープの素材を…

そう。
どっちもどっちで作成難度がバカ高いのである。

うおぉ、俺にはやはり狩りなど出来ないのだ…

まぁ、やるけど。
んー、希望があるとすればくくり罠か…?

要は頑丈なロープがあればいいんだ。
柔らかく、切れにくい、ロープ状の何か。

そうだ、蔓…
は見当たらないな…

糸でもあれば時間はかかれどロープは出来るのに…
…いや出来ねぇわ。
編み方しらねぇ。

なんで蔓がないんだ。
サバイバルで定番中の定番アイテムだろ!

「はぁ」

虚無にあたっても何も得られない…

ため息をつき、目線を下げた。
その時、あるものを見つけた。

それは木の幹、その表面だった。

何故かはわからないが、木の皮が剝がれ落ちていた。

何故、そんなことが?

原因を考えようとするが、ふと、ひらめいた。

この木の皮、湾曲している。

もしかして、もう少し皮の薄い木であれば、削ってロープができるのでは?
だがそのためには木を切り倒す必要がある。
何故なら、ロープを作るには長い皮が必要だから。
そして、俺は木登りができない。

よし、方向性は決まった。


まずは斧を作ろう。

斧を作るには、丈夫な持ち手と重い刃が必要だ。
そして俺でもできそうな組み合わせはーーー

まぁ、木の棒と石の刃だわな。

早速拾いに行こう。
ついでにまっすぐな木のあるエリアに移動しようか。
川を上っていけば道に迷うこともあるまい。
早速出発だ。



ぐぅ



忘れてた。

食えそうな果物でも探そう。

…あれ、さっき狩りができないと食料がないって困ってなかったか?

……。

空腹は恐ろしいな。







さて、探していたものは見つかった。
木の棒、三角の石、まっすぐな木、そして食えそうな果物!

問題はそのまっすぐな木に果物が実ってるってことだ。
食事はお預けらしい。

そして問題その2。
この棒と石はどうやってくっつけるんだ…?

日本の斧は鉄の刃の中央に穴が開いていてそこに棒が刺さっていた…と思う。

石…お前、穴開くのか…?

「アクヨ!」
「開くわけねぇだろ!!」

そんな一人芝居をして、ふと思った。

じゃあ木の方に穴を開けちゃおう。

絶対そっちの方が簡単だ。

…結果、木の棒が裂けた。

ああ!
頭動かねぇ!
腹減った!!!


「聖霊よー、我にあの果実を持ってきたまへー」

もちろん、何も起こらない。

ケチくせぇなぁ!
やっぱり金か!?
報酬がそんなに大事だってか!!?

俺はやけになって石を両手に持って木の幹に叩きつけた。
威力は弱いが斧の体は成してるだろう。

「おらぁ!!」

バコッ

キシャァァァッ!!!!

「うわぁぁぁぁ!!????」

石を叩きつけた瞬間、木が暴れだした。
ぐねんぐねん。
ばしんばしん。
某魔法学校の暴れ柳みたいだ。

…よくそんなこと覚えてたな。

てか、え?
この世界、木って動物なの?

暴れ柳…もとい暴れロープの材料はあたりかまわず木の幹を揺らし続け、地面を叩き、それはもう大惨事といった感じになっていた。

その時だった。

ヒュッ

右頬に鋭い痛みを感じる。
指先を紙で切ったときみたいな痛みだった。

右頬から首にかけてくすぐったさを感じた。

当たりはついているが、やはり抗えない。
手で触れ、それを目の前に持ってきた。

やはり、血だ。

なにが、起こったんだ?
まるで、あいつらが使う風魔法だ。
範囲が狭いが攻撃性の高く、鋭い、圧縮された空気の刃。

まさか、この木…なのか?
この木、魔法を、それも…

よく観察すると、この木の周辺、いたるところに傷跡が出来上がっていくのが見えた。

地面が切れ、草が舞い、石が割れる。

おいおい、こいつ…

全方位無差別に魔法を撃ってやがる!

どうする、離れるか?
この場にとどまるのは明らかに危険。
だが、魔法を使えるということは例の魔法陣が埋まっている可能性が高い。
こいつは動かない。
しかも鹿よりかは解体が容易だろう。
一旦離れて戻ってくるか?

いや、もし魔石というものがあり、魔力の使用がそれっきりだった場合を考えると待つ、というのは不味い。

止めなければ。
行けるのか?

ーー行くんだよ。

「ああ、その通りだ!!」

俺は他の木を盾にしながら暴れ木の周りをまわり、割れた石を拾った。
大きくてかなり重いが、持てないことはない。

やはり、この魔法で切られたものの断面は平らだ。
つまり、角が鋭いということだ。

俺は暴れ木の近くに走り出す。

もちろん、手で振るんじゃ威力不足だ。
しかし、今はありがたいことに、

木の方から勢いよくぶつかりに来てくれる。

あとはこれを地面に立てておけば勝手に幹をそこに叩きつけーーー



ーーー自滅するってわけだ。


キシャァァァァァァァッッッッ!!!!


先ほどよりひときわ大きい叫び声。
断末魔という奴だろう。
暴れ木の幹は先端からパックリ割れていた。
一泊おいて、そこから透明な液体が勢いよく噴き出した。
すると同時に暴れ木は暴れない木となり、ぐりゃりと地面に倒れこんだ。

「…やったか?」

あれ、これは言ってはいけない言葉だっけ?
なんでだっけ。

でもまぁ、今は。


「うっし!!!!」


この勝利を喜ぼうじゃないか。


魔法を使う生物の討伐、完了。

それを祝福するように遠くの方から強い光が差し込んでくる。
どうやら、もう朝らしい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時間は少し遡り、同山中。
男二人はたいまつ片手に歩いていた。


「おい、クソガキ。」
「ひっ」
「本当にこの辺に置き去りにしたんだな?」
「あ、ああ。間違いない。まぬけはーーー」

バキッ

「痛ってぇ…」

「次、俺が質問した時以外に喋ったらその憎たらしい頭を2発殴るからな」

「今のはあんたの質問に答えたんだろ!?」

バキッ
バキッ

「痛って!」
「次は4発だ。」

「…あとうちの息子を間抜け呼ばわりするのはやめろと言っている。」

バキッ

「〜〜〜っ!」

「ルーイ!返事をしろ!!」
「ルーイ!」

バキッ
バキッ
バキッ
バキッ

「あっ、あだっ、い、痛てぇ!!これもダメなのかよ!??」

「ルーイ!ルーイ!」

「クソガキ、どこに行ったか心当たりは?」
「…近くに川がある」


二人は近くの川に立ち寄った。

「な、なぁ」
「なんだ」
「この川を下って行ったんじゃないのか?」

バキッ

「なんでだよ!まともな意見だろ!」
「許可なく発言したからだ。それに、おそらくルーイなら、上に行く」
「そんなわけねぇだろ」
「何故そう言い切れる」
「あんただって知ってるだろ。だって、この先は、ブレイクツリーの縄張りだ。動物だって近づかねぇ」
「だからこそだ。」
「は?」
「ルーイは魔力がない。」
「…そういうことか」
「魔力を感知し狩りを行うブレイクツリーは、ルーイには気づかない。ルーイだけを守る要塞となる。」
「だがよ」
「ルーイは賢い。これに気付いたとして、無策では飛び込まんだろう。あいつは必ず生きている。もしかしたらひょっこり隣町で発見されるかもしれない。」
「…。」
「だが、お前にはルーイを捜索する義務がある。」
「…。」
「ルーイを見つけるまで帰って来るな」



…月明かりの届かぬ深き森の中。
取り残された男の名はマシュー。


「くそが!死刑宣告じゃねぇか!!」

マシューは地面に転がっていた石ころを蹴飛ばした。

ゴン。
キシャァァァッ!!!!

「くそくそくそくそ!!なんでこう運が悪いんだ!
勝手にいなくなりやがって!
絶対に許さねぇからなぁぁぁ!ルーイィィィ!!!!!」

彼の叫びは世闇に消えた。



彼の遺体が発見されたのは翌朝の事だった。

朝一番に結成されたルーイの捜索隊によって発見されたのだ。

体は複数体のブレイクツリーによって切り刻まれ、地面に溶け込み、既に1/4程が吸収された状態だった。

魔法を使って応戦した様子は見られたが、ブレイクツリーの樹液は衝撃を吸収し、少しの傷なら修復できる治癒性があり、様々な魔法の効果をを無効ないし軽減する。
結局、マシューによって傷はつけども、討伐されたブレイクツリーはいなかった。

遺体は安全面の観点により、放置された。…いやいや。

ちょっと待て。



嘘だろ、お前。



俺は今、勝利に歓喜していたのもつかの間、呆然と立ち尽くしていた。

両手にはそれぞれ半分に割られた、果物っぽかったものの片割れーーー



この果物、中身、木なんだけど。

めっちゃ木目ついてんじゃん。

てことは果物じゃねーじゃん。



…柔らかいし食えなくはない、か?



恐る恐る口に運んでいきーーーー



「ーーーいやぁ、最終手段だな、これ。うん。」



怖すぎて止めた。

さっきまでうねうね動いてた変な木を食う気にはなれなかった。



だが、空腹が限界なのもまた事実。

人間、水さえ飲めば1週間は食わずに生きていけるんだっけか?

それ生きてるだけじゃね?

動けないだろ。

その状態でどうやって物食うんだよ。



つまり、1週間を待たずして、体が動かなくなったらゲームオーバー。

タイムリミットは不明。

推定、もうすぐ。

至急、何か食わねば。





……。





結局あの果実っぽい木の塊を食った。

うまかった。

案外栄養あるんじゃないか?

毒があったらもう知らん。

やれることはやった。

この辺全然動物いねぇし。



すこし、眠ろう。

腹を満たしたら眠くなってきた。

























…いやいや。

ちょっと待て。



嘘だろ、お前。



ここ、あれじゃね?

ブレイクツリーの森じゃね?

なにが暴れロープの材料だ。

昨日の俺、ブレイクツリーにタイマン挑んだの?

死にたかった?

逃げろよ。

さらに意味わからないのはブレイクツリーのこぶを食ったこと。

いや、たしかに幹とは色が違うし丸いけど、食えるわけねーじゃん。

…なぜかうまかったけど。



吐こうにも胃には何も残っていなかった。



え、こわ。



というかなんで周りのブレイクツリーは襲ってこないんだ?



…ああ、俺に魔力がないから見えないのか。

だから昨日も石で殴りつけるまで動かなかったんだな



…石で殴りつけた…?



ま、まぁ。



とりあえず予定通りこの暴れ…じゃねーや。

ブレイクツリーを解体するか。



てか、こいつ元はこんなふにゃふにゃだったのか。



樹液が噴き出した途端こうなったし、中の樹液の密度の操作で動くのか?



うーん、不思議生物だ。





近くの割れた石ころを拾い、パックリいってる先端から裂いてゆく。

すると、それっぽいものがあった。



幹の中央には大きな、こぶし大の緑色の石ころが埋まっていたのだ。



だが、それ以外は見つからない。

裂けども開けども年輪しか見つからない。



「もしかして、こっちか?」



俺は上の方にある木の葉をちぎり取った。



…別に、普通の葉っぱだな。



特段、変わった様子のない。

それこそ前世に落ちていても違和感のない木の葉だった。



いや、それもそうか

よく考えりゃ葉っぱに魔法を打ち出す機能があるんなら今頃俺はミンチになってるはず

なら…



俺は木の枝に注目する。



記憶が正しければブレイクツリーの頭方向にしか魔法は飛んでない。

しかし、葉は関係ない。

なら、こっちじゃないか?



外見は特に異常なし。

枝の先端を切り落としてみる。



ビュッ



樹液が飛び出した。



そう、飛び出したのだ。

石のナイフで切断したのにもかかわらず、だ。



それは。
石のナイフの、切断に用いた部位が破損していることを示す。



「これは…」



石を観察する。

石の破損部位は、きれいな断面を見せていた。



間違いない。

この樹液が、魔法の正体だ。








それから、しばらくブレイクツリーの樹液について検証を行った。

結果からすると、おそらく、この樹液には魔力が込められている。

ではこの樹液が指示書の役割を果たしているのか?



違う。

そうじゃない。



おそらく、だが。
樹液そのものが、魔法としての役割を果たしている。

……。

それはつまり、ブレイクツリーの魔法は、精霊の力を借りていない、ということになる。


この世界の魔法は、詠唱者が精霊にお願いをし、精霊は詠唱者から魔力を吸い出し、精霊が魔力を魔法に変換、というプロセスを踏む。

そういう風に教わっている。
少なくともこれが世間一般としての知識だと考えていいはずだ。

だが、このブレイクツリーのプロセスはこうだ。
まず魔力がある。
それは魔法としての機能を持っている。



もう原型なんてない
特筆すべき点としては、既に外へ排出された樹液は魔法として機能せず、また、使用された樹液は消滅するということか。
異質。
明らかに俺が知っている魔法とは異なる。
しかし現象として実際に起こっている。

まさか人類史上ずっと謎であった精霊の正体が、ブレイクツリーだとでも云うのだろうか?

…。
それは流石にないだろうが、これを突き詰めていけば、この世界の魔法という物の根幹にかかわる理解を得られるだろう。
そんな確信めいた予感を感じる。

だが。
今はまだ考えても答えにはたどり着けないだろう、と。
そんな予感もまた存在した。
なにせサンプルが足りない。
この世界で魔法を使用するのは人間とブレイクツリーだけではないのだから。

しかし惜しい。
本来であればこの樹液はサンプルとして回収したいのだが、残念なことに密閉できる容器は持ち合わせていない。
樹液というのは空気に触れると硬化を始めてしまう。

まぁ、それはそれで固まった樹液が魔法のような現象を引き起こすのか気になるが。

とにかく、容器がない以上液状の樹液はあきらめるしかない。
俺が眠りこける前に飛び出して、既に硬化した物を砕き、いくつかを持っていくとしよう。

あとはこの緑色のこぶし大の塊。
もしかしたら、これが魔力のある樹液を作り出す器官なのかもしれない。
持っていくことにする。

めぼしいものはこれくらいか。
じゃあ、と立ち上がった時ふと気づく。

「こっから、どこ行こう」

そう。
何も考えていなかったのである。
昨日はなんとなく隣町まで行こうなどと考えていたが、今頃捜索の手が伸びているはずだ。
そんなことをすれば流石に次の日には実家に強制送還だろう。
両親には悪いが、俺はあの村には帰りたくない。
何かしら無事を伝えられればいいのだが、魔法の使えない俺にはその手段がない。

あー、携帯電話発明して全世界に普及したい。
電話の仕組みなんて、番号を入れて発信ボタン押したら相手にかかるくらいしからないけど。
どっかに、言うだけでポンと作り出せる天才はいないだろうか。
…まぁ、もし電話ができたとしても絶対流行らんが。
魔法でいいもん。

改めてこの世界は生きづら過ぎる。
そう感じた。
だが、俺は今世こそ悔い無く生きると決めた。
逃げないと決めた。
この世界で、謳歌すると決めたんだ。

先は長いがゆっくりやろう。
前世の偉い人も言っていた。
諦めない者には女神がほほ笑むと。


……あれ、これってなんかのゲームの話だっけ?
まぁ、こんなに説得力があるんだ。
現実でも通用するに決まってる。

とりあえず、山を下りてしばらく進もう。



:::::::::::::::::::::



俺は今非常に困っていた。

時は山を抜けてから半刻ほど。
場所は先ほど行くのはやめておこうと考えていた隣町。

何故そんなところにいるのか。
別になんてことはない。
いたって単純な理由から俺は自分の判断を誤りだとした。

そう。
食料の調達だ。

それはそうだろう。
昨日…というか今日の明け方にブレイクツリーのこぶを一つ食べたがそれだけだ。
今はさほど腹は減っていないがここからさらに遠くの町を目指そうとすると、徒歩では一週間程かかるはずだ。
流石に過去徒歩で向かったことはないが大きくはずれていない。
ならば必然的に食料を買い込む必要があるというわけだ。

そう思い、俺はすぐにこの村を出ようと考えながら村へ入っていった。

そこまではよかった。
しかし、そう。
当然のことながら。

ーーー俺は金を持っていない。

事情を説明すれば誰かが食料を別けてくれるかもしれない。
ただし、それには俺の村への報告といううれしくないお節介付きだ。

ならば事情を隠すことになるが、こんな見ず知らずの子供に食料を与えるものはいないだろう。
まずは事情を聞きだそうとするはずだ。

労働をするにしてもそうだ。
働かせてください、などといっても魔法を使えない子供なぞ雇う気にもならないだろう。

むむ、どうするか。
最悪道中その場その場で食料を調達することになるだろう。
流石に辛いものがある。
ぜひともこの村で食料を調達したいが…

「…ん?」

俺はあるものを見た。
それはテントタイプの馬車だった。
馬車の荷台は結構大きく、外から見る限りまだ内容量には余裕があるようだった。

もし、仮に馬車で次の町に行くとしよう。
馬のスピードにもよるが、3日ほどで着くことになるだろう。
ならば食料は向こうに着くまで耐えることはできる。
向こうに着いてしまえさえすれば俺の捜索の範囲からは抜けられるはずだ。
脇目も振らず乞食が出来る。
もし、乗れたらの話だがな。

…頼んだら乗せてもらえないだろうか。
乗せないだろうなぁ。

もし俺なら盗難が怖くて乗せる気にはなれない。

…んー。

でも。
自分を正当化するつもりはないが、これしかないように思える。

俺は、御者の目を搔い潜り、荷台にもぐりこんだ。



::::::::::::

馬車が動き出したのはそれからしばらくの事だった。
新たな荷物の搬入などはなく、そのまま入口に布がかぶせられ、俺の存在を知らぬまま出発した。

うー、罪悪感がやばい。

降りたら御者の顔を確認して、将来必ず謝罪とお礼に行こう。
そんな決心をする。
まぁ、それはそれとして。
今は寛がせてもらおう。
俺は荷物を傷つけないよう慎重に移動させて、俺が横になれるスペースを作った。
荷台はかなり揺れ、何度か床に叩きつけられるが、我慢できないものではない。
3日後にはどうなってるかわからないがな。


さて、暇だ。
出発から結構な時間が経った時、そう思った。
これから3日間このうす暗い部屋の中で過ごすと思うと億劫になってきた。
荷台の入り口の隙間から外を覗き見る。
しばらくは気がまぎれたが、代わり映えしない景色に飽き、再び暇を感じ始める。
仕方がないのでひと眠りすることにした。


ふと、目が覚める。
入口の隙間から入る光はなく、馬車が動いている気配がない。
どうやらもう夜になっているようだ。
音を立てないようにこっそりと荷台の入り口から顔を出す。
先頭側の少し離れたところで、焚火がたかれているのが確認できた。
御者は近くの木に背を預けていた。
うーん、ここからでは寝ているのか起きているのか判別がつかない。
というか今何時なんだ。
…喉、かわいたなぁ。
ここから少し出て川でも探しに行きたいところだが、どうしよう。

……いや、少しでもリスクのある行動は控えるべきだろう。
まだ一日分の距離しか進んでないのだ。
ここで追い出されたら詰む。

俺は静かに入り口を閉じ、元の場所に戻った。
真っ暗な静寂が訪れる。
だが、眠気はない。
ミスったなぁ。
あの時寝るべきじゃなかった。

あ、そうだ。
あの樹液はどうなったか。
俺はポケットを手の間隔のみで探る。

あ、あった。
魔法になった液状の樹液と同じように消失してるかも、と思っていたがそれは違ったようだ。
触っている感じ、最初より水分が抜けたのか、気持ち小さな欠片になっている気がする。
その他、触感に変化はなし。

…まじで昼間ミスったな。
こんな検証明るくないとまともにできないだろうに。

あと、こっちか。
樹液をポケットに戻し、反対側のポケットから緑の石を取り出す。
触感の変化はなし。

おかしいな。
ブレイクツリーの器官の一部だったら収縮したり、表面が乾燥したりしてもいいものだが、それら変化は一切なかった。
触っているだけなら本当にただの、それこそその辺に落ちている石と変わらなく思えてくる。

…もしかして成長過程で飲み込まれただけのただの石ころだったりするのか?
いやぁ、悩ましい。
出来ることならもう一体ブレイクツリーを討伐したかったが流石にあれをもう一度はやりたくなかった。

俺は只の石ころかもしれない緑の石をポケットにしまう。

再び、なにもない時間が訪れる。
だが、少し時間が経ち何とか眠れそうな気はしてきた。

俺は横になり、羊を数え始める。
羊が1匹。
羊が2匹。
そういえば羊は英語のsheepとsleepをかけてるから日本語で言っても何の意味もないんだっけか。
じゃあ、1sheep。
2sheep。

……。

結局、日が昇り、馬車が出発するまで俺は羊を数え続けていた。


:::::::::::::::::




さて、二日目。
明りがあるからと言って、特に樹液と緑の石についての新たな情報は見つからなかった。

むむ、ダメだな。
暇すぎる。
……やるしかないか。
最後の3日目までとっておこうと思っていたが、致し方あるまい。

この荷台、何が載ってるんだろうな。
今まであえて視界から外すようにしていたがもう我慢ならん。
端から見ていこう。
とはいっても流石に釘止めされてる木箱を開けるわけにはいかないので、中身が確認できる荷物は少ないだろう。

ふんふん、まぁ。
麦と思われる穀物、干し肉、加工された木材。
積み荷としてはごく普通のものだった。
釘止めされている木箱の中についても予想はつく。
おおかた虫が湧く可能性のある食料品か、日光が当たってはいけないもの。
ああ、あとは割れ物とかか。

……つまらん。
本当に大したものは乗っていなかった。
まぁ、薬物だったり奴隷だったりが出てきても困るだけだが。
将来どうやってお礼すればいいんだよって話になってしまう。

ぐぅ

その時、腹の虫が鳴った。
そこまででかい音ではないし、ばれることはないだろうが。
問題はそこじゃないな。
普通に腹が減ってきた。

うう、山にいた時とは違う状況に俺の体が悲鳴を上げている。
そう、目の前に食料があるのに食べられない。
マジでキツイ。
特に干し肉。
少しぐらい食べてもばれないんじゃないかと悪魔がささやいてくる。

だがだめだ。
既に馬車に勝手に入り込んではいるが、流石に御者の人に実害を与えるわけにはいかない。
なにか、空腹と暇を紛らわす方法を考えよう。
寝る以外で。

あー、そういえば。
ブレイクツリーの構造については考察したが、生態についてはからっきしだったな。

ブレイクツリー、化け物みたいな木なのか、木みたいな化け物なのかは判っていない。
魔力に反応して攻撃をする。
多少の傷なら樹液が修復する。
魔法が効きづらい。
体は柔らかく、樹液が抜けると地面に横たわる。
おそらく、樹液の圧力を操作して、体を動かすことができる。
果物のようなこぶができる。
樹液を枝の先端から放出し魔法を使う。
魔法は現在確認できているものは風の刃のみ。

明らかに情報が足りてない。
推測が多すぎて何の判断もしようがない。

……。

……?

あれ、傷は?
頬を撫でる。
かさぶたみたいなものの触感は伝わってこない。
たしか、腕も切られたはず…。

見ても傷跡らしきものはない。
だが、ポケットの中の戦利品があれが夢ではなかったことを物語っている。
では、治ったのか?
そうとしか考えられない。

まて、どのタイミングだ?
いつから傷は治っていた?
村に入った時点で何も言われていないということはその時には治っていたのだろう。
それ以前…?

マシューの回復魔法の効果が残っていた?
そんな効果残留など聞いたことがない。
他に心当たりは。
……ブレイクツリーのこぶを食った?

ブレイクツリー樹液は自身の傷を治す効果がある。

あのこぶは、樹液が詰まってできたものではないだろうか?
つまり、他の部位より多量の樹液を含んでいる。
それを食って、俺の怪我が治った……?

いや、まて。
流石に考えが飛びすぎだ。
だが、そこしかタイミングは考えられない。

……もしかして、ブレイクツリーの再生能力は魔法によるものなのか?
樹液に魔力が込められていて、それ自体が魔法として働く。
あの樹液は風魔法の効果と、回復魔法の効果を併せ持っているのか?
…いくら樹液がブレイクツリーを再生できたとしても、人間を再生できるわけはない。
考えれば考えるほどそうとしか思えなくなってくる。

……。
まぁ、検証する手段はない、か。

いや、まて。
ある。
俺がけがをして、その直後この樹液のかけらを飲み込めば、状況の再現ができる。
この樹液に魔力が残っていれば、だが。

うーん、やはりいつかあの山に戻らねばいけないかもしれないなぁ。

ヒヒィィィン!!!!

その時、馬車が急停車した。

「うぉ…」

少し声が出てしまった。
バレてないだろうか。

「ひぃ!お助けを!」

前方から声。
これは、御者の声か?

「馬車を置いていけ!そしたら命は助けてやる!」

さっきとは違う声。
昨夜、御者は一人であった。
言動から見ても間違いなく敵対者だろう。

「そんな!ここからだと次の町まで歩いて4日はかかってしまいます!」
「へ、知るかよ!…おっと、変な動きはするんじゃねーぞ?次不用意に喋ったら命はないと思え。お前が口にしていいのは、わかりましたか、殺してくださいのどちらかだ。」
「わ、わかりました…」

うわー。
まずい。
非常にまずい。
このままだと荷台にずっと隠れていた不審人物として殺される未来が見える。
かといって出ていけば御者も知らない謎の不審人物として殺される未来が見える。

あれ、今度こそ詰みか?
女神様、助けてくれてもいいんですよ?「おい、お前ら。そいつ縛って転がしておけ」
「へい!」

軽く争うような音が聞こえる。
どうやら御者の人は縛られてしまったらしい。

「さーて、戦利品はどんなもんだー?」

やっべ。
まともに隠れる時間もなかった。
近づく足音。
必死に周りを見やるが、隠れられそうな場所はない。

「ごかいちょーう」

はらりと入り口が開けられた。

「……盗人?」

ひげ面のごつい盗賊が間の抜けたような声を上げる。

いや、それはお前だろ。
もちろんそんなことを言えるはずもないが。

さて、姿を見られてしまった以上、次の俺の発言がすべてを決めることになる。
なんといえば見逃されるだろうか。
なんにせよ、向こうにメリットを示さねば目撃者として消される可能性が残る。
今自分が示せるメリット。
何かあるか?

…悲しいかな、そんなものはなかった。

ああ、もう何でもいい。

「あんた…もしかして親父か?いや、間違いない!親父!!!!」

……。
…………。

「お前、まさかアレクか?どうしてこんなところに…」

通じたぁぁぁ!!!

「お頭ー、何か高そうなもんありましたか?」

盗賊団の仲間たちが寄ってくる。
緑のバンダナとスカーフを頭に巻いて顔を隠してる、細身のザ・シーフみたいなやつと、
…特にこれといった特徴のない中肉ちゅうぜの優男。

「え、なんですかこのガキ。奴隷っすか?」
「奴隷一人運ぶのに馬車を一台使うなんて、もしかしてどっかの貴族のボンボンだったりするんですかね?」
「なんにせよ高く売れればいいっすねー」

仲間は二人だけなのか?
何やら物騒なことを話している。

「馬鹿野郎!こいつは俺のせがれだ!」

親方、キレる。
かっけぇぇ!
だましてることは猛烈に申し訳ないがここは素直に感謝しておこう。

「えぇ!?お頭子供いたんすか!??」
「この若頭の年齢…まさか、お頭の空白の3か月の…!」
「お前ら、喋ってねぇで動け!ここは稀に兵士も通る。長居はしたくねぇ」
「「へい!」」

俺は子分2人に丁寧に、まるで赤子を取り上げるかのように優しく荷台から降ろされた。

「アレク、どうしたんだこんなところで?」

…これは何か不味い気がする。
隙をついて逃げようかと思っていたが、親方がかなり積極的に話しかけてくる。

「あー、えーと。そう、あの後あいつがわけわかんねぇイチャモンつけてきたんでぶん殴ってさ。それで追い出されたんだよ」

こういう時は、堂々と。
ただし省略できるところは曖昧に。
俺のあがきは果たしてーー

「あいつってマティか?がっはっは、ついにぶん殴っちまったか!」

ーー通じた。

え、おお。
案外行けるもんだな

「それで俺が来るだろう場所を張ってたわけか。やるじゃねーか」
「あはは…」
「おい、お前ら!ずらかるぞ!今日は帰ったら宴だ!」

…宴?
もしかして俺も一緒にずらかることになってないか?

「アレク、ちびの時から俺と居たいって言ってたもんな。もちろん、歓迎しよう!ようこそ、『シャグラ・アギト』へ!!!」
「これからよろしくっす!若頭!」
「お頭のせがれだからって最初は雑用からですよ!」

…。
もう断れねぇよ。
俺はやけくそ気味に拳を振り上げ叫んだ。

「いっえーーーい!!!!」



:::::::::::::::::::


俺たちは奪った馬車を走らせ、アジトへと向かっていた。
ごめん、御者の人……ッ!
アジトは道から少し離れたところの森の中にあった。
手作り感満載の小さな小屋だった。


「いやぁ、今日は大量でしたねぇ」
「こんなに食料が手に入ったのいつぶりっすか?」
「それに馬が二頭もありますよ」
「がはは、アレクに感謝するんだな。」
「へ?」
「あの商人を言いくるめて大量の食いもんを運ばせてたんだろ?」
「えー!マジっすか!若頭パネェっす!」
「流石お頭の血を引くだけはありますね」
「………。いやぁ、親父にはバレバレかぁ」
「「パネェ!」っす!」

ちょっと楽しいかもしれない。
多分こいつら根は悪い奴じゃないんじゃないか?
…盗賊をやっている、というのは少々いただけないが、しばらく。
すべてがばれるまでここにいていいだろうか。

初めてなんだよ。
こうやって、人に褒められて、認められるの。
偽りでもいいからさ、ほんのしばらく、いさせてくれ。

「お、おい、アレク。どうした、いきなり泣き出して」
「…いや、うれしくてさ。」

おかしいな。
痛くもないのに涙が止まらないや。

「そんな!照れるっすよ!」
「キースの事ではないと思いますが」
「アレク……なに湿気た面してやがるんだって言ってるんだ!ここは宴の場だぞ!」
「そうっすよ!」
「まぁ、なんだ。………すいません、何も浮かびませんでした。」
「ふふっ、じゃあ黙ってろよ………えーと。」
「はっはっは、俺はマーク。で、こっちのすっすが…」
「俺っちはキースっす!すっすっす!」
「ま、この流れなら俺も改めて名乗ろうか。俺はエド。ああ、ここでは親父、じゃなくてお頭と呼ぶんだ」
「うっす、お頭。」
「すっすが移った…ッ!」
「さあ、お前も名乗るんだ。」

ーーー「俺はアレク!雑用は任せろ!」
「雑用!?」
「流石若頭!頼もしいっす!」
「がっはっは!」

楽しいな。
でも辛いな。
俺は魔法が使えない。
だが、本当のアレクも魔抜けだとは考えにくい。
嘘がばれるのも時間の問題だろう。
いつか別れの時が来る。

…笑わなきゃ。
終わりがあるから、今を楽しまなくちゃな。

「さあ、今日は飲むぞ!」
「「「おー!!!」」」


:::::::::::::::::::::

その日の夜。
俺はうまく眠りにつけず、少しあたりの散歩をしていた。

夜の森は静かだが、静寂ではない。
森には様々な生き物が住んでおり、夜行性のものも少なくない。
虫の音や、鳥の鳴き声。
よくわからない音もいくつかある。
それらは心地よく耳を通過していく。

ふと、思いたち、遠くから木に拾った石ころを投げてみる。

コッ。

軽い衝突音が聞こえ、石ころは地面に落ちた。

まぁ、そうだよな。
この世界の木が全部ブレイクツリーみたいに暴れだしたら恐ろしすぎる。
…普通の木には緑の石は埋まっているのだろうか。
樹液は魔力をまとっているのだろうか。
気になるが、試してみるにも時間が遅い。
明日、キースあたりに頼んでみようか。
わかったっす!などと言って、魔法でさっくり切ってくれるに違いない。

…盗賊団、………えーと。
あれ?

「何アギトだっけ?」

なんかシュモクザメみたいな名前だった気がするんだが…。

「シュモク・アギト?」

なんか違う気がする。

「シャグラ・アギトっすよ」

ふいに後ろから声をかけられた。
ああ、それだ。
全然シュモクザメではなかった。
振り向くとそこにはキースがいた。
トレードマークの緑のバンダナはいまだつけたままだった。

「こんな遅くにどうしたっすか?」
「ああ、なんか眠れなくてな。キースこそどうした?」

キースがくすりと笑った。

「若頭はまだ知らないんすね。見張りっすよ。見張り。」
「そうか。確かに必要か。」
「っす。というか、若頭。」

キースの声色が若干変わった。
なんかこう、むかつく声になった。

「初日とはいえ、うちらの団名は覚えておかないと駄目っすよー?」
「…申し開きもない。だけどめちゃくちゃ覚えにくくないか?シャグラって。」

少なくとも俺はそんな言葉を聞いたことがない。
アギトの方は顎、みたいな意味だったはずだ。

「まぁ、そうっすねー。俺っちも覚えるのに3日掛かったすからねー」
「人の事言えねーじゃん」
「あははっ、ごめんっす。」
「それで、シャグラってどういう意味なんだ?俺は聞いたことがないんだが」
「あー、それはっすねー。」

ずいっと。
キースは俺に接近する。
そのまま接近を続け、キースの口元のスカーフが俺の耳に触れた。

「やめろ、気持ち悪い。」

俺はキースを押しのける。
野郎にそんなことされてもうれしくない。

「あー、ひどいっす!」
「普通に話せばいいだろ」
「ふーん、っす。もう教えてあげないっすよー」

なんだそりゃ。
まぁ、だったら明日エドに聞こう。

「じゃあ質問を変えよう。お前ら、なんで盗賊なんてやってるんだ?」

さっきまでそっぽを向いていたキースは急にこちらを向いた。
忙しい奴だ。

「ーーー特に深い理由はないっすよ。」

なんだ今の間は。
俺が訝しむような眼を向けていたからか、キースは再び口を開いた。

「まぁ、強いて言うなら、お頭がやるって言うからっすね」
「親父が?」
「っす。お頭は俺っちとマークの恩人っすからね。お頭が行くなら付いて行くだけっす。」
「そうか。エドは、愛されてるんだな。」
「はいっす!」

本当に、居心地のよさそうな場所だ。

「あ、そうだ、キース」
「どうしたっすか?」
「一つ頼み事してもいいか?」
「わかったっす!」

…まだ何も言ってないんだが。
まさか説明なしに引き受けられるとは思わなんだ。

「アレクは若頭っすからね。俺っちより上っすよ」

キースが俺の表情に補足の説明を入れる。

「え。いやいや、リーダー含めて4人しかいないんだから、そこに序列作る必要ないだろ」
「必要がなくても、もう決まったことっすから」

まぁ、尊敬する男の息子にも、その尊敬の念が向くってのはわかる。
解るが、うーん。
なんとも居心地が悪い。


「ーーー別に、血が繋がってなくったって、お頭がせがれって言ったんす。ならアレクは若頭っすよ」
「は?」

まずい、驚いて素のリアクションで聞き返してしまった。
これじゃあ認めているようなものじゃないか。
俺はこれ以上ぼろを出すかと、内心で焦りつつも表情を落ちつけようと努めた。

「あはは!変な顔になってるっすよ」

変な顔になっていたらしい。

「別に、隠さなくてもっというか、元々知ってるっす」

衝撃の事実。
元々知ってた。

「だって、お頭のお子さんは、既に死んでるんすから。」

衝撃の事実パート2。
既に死んでる。

「どういう、ことだ?」

頭が混乱している。
エドの子供はすでに死んでる。
だのに俺を息子として迎え入れた。
なぜ?
死んだ息子を語られたら起こって然るべきでは?

「うーん、まだここまで教えるつもりはなかったんすけど。」

キースは再び接近してきた。
だが、流石に今回は抵抗しない。
出来ない。
もしかしたら刺されるかも。
そんなことを考えながら俺は固まっていた。
キースのスカーフが耳に当たりくすぐったい。

スカーフ越しのささやき声がこう告げた。

「お頭、実は頭がおかしいんすよ」

………めっちゃ暴言。
いや、流石にない。
まさか何かしらの精神病を患っているのか?

「自分がこうだ!って思うと、それが事実だと信じ込んでしまうっす。たとえ、過去と食い違いがあったとしても、一度信じた真実が折れることはないっす。それを指摘すると、怒るでもなく、取り乱すでもなく。ただ、わけがわからないという顔をするんすよ」

やはり、精神病っぽい。
俺は医術に詳しくはないが、おそらくそうだろう。
前世でも、精神病は治すのが難しいとされていた。

ここまで考えたところで、キースが離れた。

「なにか、心当たりがあるみたいっすね。若頭はもしかしたら結構いい教育を受けていたり?」

鋭いな。

「そんなことない。俺は少し辺境にある小さな村の生まれさ。」
「そうっすか。まぁ、今話したことはマークも知ってるっすから、安心してここに居ていいっすよ。ただ………お頭を怖がらないでほしいっす」
「怖がる?」
「あはは、その様子なら大丈夫そうっすね」

まぁ、聞く限り、普段接している分には問題ないんだろう。
ならば俺はお頭として付いて行くだけだ。
……盗賊はあまりやりたくないけど。

「で、頼み事ってなんだったっすか?」

あぁ、忘れてた。
危うく小屋に戻るところだった。

「ああ、その辺の木を5本くらい切って、全て縦に半分に割ってほしいんだ。」
「うへー、めんどくさいっす」
「おら、若頭命令だぞ」
「この若頭、部下の扱いが荒いっす!」

それでもキースはもくもくとやってくれた。
結果としては、5本とも樹液が飛び出したりはせず、緑の石も見つからなかった。

やはり、ただの木はただの木らしい。

「若頭ー、これ何に使うっすかー?」
「いや、もういいや。」
「え。…流石に横暴っす!なんすか、嫌がらせっすか!?」

キースはいきり立った。

「いや、魔法使ったんだし別に苦労はないだろ」
「そんなわけないっす!めっちゃ疲れたっすー!」

いやいや、だってマシューは俺に加害していた時一日中魔法使ってたぞ
だが、よくみるとキースは肩で息をしていた。
え、本当に疲れているのか?
…いや。

「それスカーフつけてるから息苦しいだけだろ。外せよ」
「これを外すわけにはいかないっすー!」

めっちゃ騒がしい。
これでは他の2人が起きてしまいそうだ。
………ああ、そういうことか。

「わかったわかった。疲れたなら寝てもいい。代わりに俺が見張っておく」
「え!いいっすか!あざっす!!」

先ほどの様子とは打って変わって、キースは軽快な足取りで小屋へと向かっていった。

現金な奴め。
このために騒いだな。

まぁ、眠気なんて飛んでたし別に構わないんだが。
俺は再び静かになった森の中、一人であたりの見回りを始めた。
木々の隙間から、上りゆく朝の光が見えてくる。
時刻は5時くらいだろうか?

そういえば、今だこの世界に来てから時計を見ていないな。
まぁ、流石に時間の概念がないと不便で仕方がないので、時計が存在しないとは思わないが。
この世界は一日何時間なんだろうなぁ

てか、あれ?
夜の間中ずっと見張りをしていたが、こういうのって数時間おきに交代制でやるものでは?
俺は訝しんだ。

そんなことを考えていると、小屋の戸が開いた。
誰かが起きたらしい。

「あぁ、アレク。変わりますよ。」

マークだった。

「おはようマーク。んじゃ、俺も寝るとするか。ちょうど眠くなってきたところだった。」
「アレクは夜型でしたか」
「あー、いや。寝なさ過ぎてハイになってるだけだ。」

おとといの夜は結局寝られなかったからなぁ。
そっから寝てないのだから、体もおかしくなってくるだろう。

「だけって…。キースと交代する時間まで寝なかったんですか
?」
「いや、むしろ寝られないからしばらく外でキースと話をしていた。」
「あー、その感じだとキースに見張りを押し付けられました?」
「まぁ、そんな感じかね………。」

あ、やべ。
話ながら意識が飛びかけた。

「おっと、悪いな。ゆっくり休め」
「あー、おやすみなさい」

なんか俺最近寝不足気味な気がする。
ふわふわとした頭を動かし、自分のベッドにもぐりこむ。

「あー。」

俺はうつ伏せになってベッドに向かって声を漏らした。
だが、うれしいものでこの寝不足生活とも早速おさらばだ。




そう思っていた時期が、私にもありました。パート2。
どうして俺は環境が変わるたびに期待を裏切られるのか。
ああ、いや。
別に今回は全然許せるものなのだが。

ただ、ガンガンガンガン!
とフライパンか何かを殴る音が小屋中に響き渡っているだけだ。
安眠妨害である。

「飯だ!起きろ!」

エドの声も加わった。

ここまでされると流石に目も覚めてくる。
しかしこれは引くことのできない戦いだ。
俺は、意地でも眠りつづける!
がんばれ俺!
負けるな俺!
いっそ永眠するつもりで臨め!
耳に枕を当てて耐えるんだ!

そこで、騒音は止んだ。

勝った……。
俺、勝ったよ…。

「…すやぁ」
「起きろアレク!」
「うわぁっ!!??」


耳元で叫ばれてめっちゃびっくりした。
おめめパッチリである。
心臓もバックバクである。
キレそう。

「お頭、おはようございます。」

むすっとしながら明らかに不機嫌そうな雰囲気を醸し出しながら挨拶をする。
しかしエドはそんなもの気にも留めず笑いながら言う。

「おう、おはよう!飯だぞ!」

さっき聞いた。

「まだ全然寝てないんですけど」
「ん?眠れなかったか?」
「うん」
「そうか、大変だな。それはそれとして飯だぞ!」

ぶっ飛ばすぞ。
俺は仕方なく、気だるい体を持ち上げた。

::::::::::::::::::::::::

「遅いっすよ!」

口に食べ物を詰め込みながら叫ぶキース。
お下品。

「おはようございます」

きちんと飲み込んでから話し出すアーク。
お上品。

「さぁ、飯だ!食え!」

先ほどから飯だとしか言わないエド。
なんなんだ。

「はい、おはよう。今日は何かする予定はあるのか?」

俺は、いつの間にか用意されていた木製のイスに腰掛けながら聞く。

うお、すっげーガタつく。

俺がイスをがたがたしていると、キースが質問に答えた。

「昨日仕事したんで今日は休みっすよ。」
「そうなのか」

まあ確かに、昨日は金品ではなく食料が直接手に入ったし、しばらくはこいつらで食っていけるか。
自然と視線が、あの一夜を共にした食料の山に向けられる。
しかし、その視線はすぐにそらされた。

「あー、悪いが今日も仕事だ。」
「えー!しばらく働かなくていいじゃないっすか!」

エドの言葉にキースが不満の声を上げる。

あら、やるのかい。
これには俺も、不満ではないが疑問が湧いた。

「俺もこれだけ食料があるなら、必要以上のリスクは避けるべきだと思うが」

これが真っ当な仕事なら全然行ってもいいのだが、やはりそうではないし、理由が聞きたかった。
そもそも俺ができれば盗賊をやりたくないってのもあるし。

「いや、別に外に出るってわけじゃない。言葉が悪かったな。今日は訓練だ。」
「訓練?」

聞き返しておいてあれだが見当はつく。
十中八九新人の俺の訓練だろう。

「マーク、キースの二人でアレクに基礎を教えてやってくれ」
「あー、そういうことっすか。」

キースも納得できたらしく相槌を打つ。

「で、どこからやるんすか?」
「そこはアレクに任せる」

え、俺?
話がこっちに振られるとは思っておらず、口に運ぼうとしていた朝食がその場で止まる。
そんな俺の様子を見てか、エドは少し笑いながら言う。

「こんな小さな盗賊団だ。個人が考える力を持たなきゃ話にならん」

それはそう。
だがそんなやる気があるなら真っ当な仕事についてほしいものだ。


「ならまぁ、戦闘からか」
「ふむ、その心は?」

エドが俺の考えの理由を聞いてきた。
いや、心も何も。

「俺は人と戦ったことがない。ただの盗人なら隠密とかのが優先度が高いが、盗賊ならそっちのが役立つだろう。昨日の襲撃はあの商人がたまたま護衛を雇っていなかっただけのまぐれだと俺は考えている。。」

エドは満足げに頷いた。

「ならそれでいい。キース、頼んだぞ。」
「なんで俺っちなんすか。戦闘ならマークのが得意っすよ。」

キースが面倒くさそうに文句を言う。

…というかそういえばマークって今日挨拶以外で喋ったか?

「マーク?」

声をかけてみたが返事はない。
代わりにキースが答えた。

「あー、マークは飯食ってるときは基本喋らないっすよ。むしろさっき挨拶したことにびっくりしたっす。」

わーお。
育ちがいいのかね?

「そういえば飯食ってる途中で口開くのは珍しかったな」

エドもなかなか見ない光景だったらしい。
当のマークは涼しい顔で朝食を食べ続けているが。

「んで、理由だがキースお前、昨日見張りさぼっただろ。」
「げっ」

あーあ。
ばれてーら。

「今朝マークが俺に言いに来たんだ。アレクは新人なのに見張りをやるのか?だいぶきつそうだぞって。俺は見張りを言いつけていないってのに。」
「あー、いやー…。そうっす!昨日はアレクが代わってくれる自分から申し出たんすよ!そっすよね、アレク!」
「まぁ、そうだな」
「っす!」

必死じゃん。

「まぁ、昨日のさぼりは関係ないんだが。」

ないのかよ。

「ばらされただけっすか!」

もう既に全員にばれてたろ。
4人しかいないんだし。

「まぁ、見張りは楽なようで案外危険な仕事だ。それをやらせようってんだ。安全なラインまで育てる義務があるとは思わんか?キース。」
「うー、そういわるれと弱いっすね…。」

危険だったらしい。
まぁ今思えば、森だし野生の動物とかモンスターも出るか。
出ても小屋に逃げ込んでいたが。

「つーわけだ。アレク、今日はキースに教わってくれ」
「了解だ、親分。」

キースはがっくりと肩を落としたのだった。
どんだけ働きたくないんだよ。

それでもキースは朝食を食べ終えると席を立つ。

「それじゃあ先に行って準備してくるっす。」

…。
ここで言わねばならないだろう。
俺が魔法を使えないということを。

「みんな、話しておかなきゃいけないことがある。」



「えーと、俺っち座った方がいいっすか?」

キースは苦笑しながら先ほどまで座っていた自分のイスを指さす。
俺は無言でうなずいた。
それを見るとキースはおとなしく座る。

三人が俺を見る。


ーーああ、不味い。
口が乾いてきた。

次の言葉が出てこない。

口を開くが声が出ないんだ。

ごく簡単なこと。
俺は魔抜けだ。

たった7字の文章を伝えられない。

…村でのことがフラッシュバックする。
あの、俺が魔抜けだと発覚したその日の事。

夕暮れ時、マシューの影が俺に降りかかり、なのに奴の笑顔だけは鮮明に映って、メラメラとーーーー


「おい、アレク」

俺の意識を呼び戻したのはエドの声だった。
呼吸が乱れている。
ひどい汗だ。
眩暈もする。

「……」

エドはそれ以上の言葉をかけなかった。


言え。
言うんだ。

「俺は。」

大丈夫。
こいつらは大丈夫だ。

「ーー魔法が使えないんだ。」


……。

あまりにも長い沈黙。

そして。



「はぁー」

それは三人によるため息で打ち消されることになる。


「んなことかよ!」

エドの非難するような言葉。
しかし、それは魔法が使えないことに対してのものではなかった。


「…別にそんな気にすることではないでしょう」

マークの呆れる声。


「めっちゃ溜めるから何事かと思ったっす。じゃ、俺っちは外で待ってるっす」

キースに関してはさっさと席を立って小屋を出ていってしまう。


えー、と。
えらくあっさりというか、強烈な肩透かしを食らった、というか。


そんな俺を見かねてか、エドが言葉をかけてくる。

「あのなぁ、魔抜けは確かに珍しいがそんな怯えるもんでもねーだろ。お前は俺の息子だ。どこの世界にそんなクソどうでもいい理由で息子を見限る親がいるってんだ。」

言葉こそ荒い。
しかし、エドの眼はまっすぐに俺の目を見つめている。
それは、噓偽りなど無く、しっかりと俺を見据えたものだった。


:::::::::::::::::::



「悪い、遅くなった。」

しばらく外で待ってたキースに一言謝る。

「いや、いいっすよ。それで、具体的にはどんな訓練をするっすか?」

……。

いや、それはお前が考えることだろーーー。

そうは思ったが口に出すのはやめた。

代わりにこんなことを言ってみる。

「ーーなぁキース、魔物を狩りに行かないか?」「なぁキース、魔物を狩りに行かないか?」

果たして回答はーーー

「ーーーえと、魔物って、なんすか?」

であった。

「えっ」

思わず声が出た。
魔物、魔物って普通の言葉じゃ?
そう、だよな?

……。
いや、違う!
この世界でそんな言葉聞い!
前世の知識から引っ張ってきて俺が勝手に呼んでるだけだ!

なんと…

そういえば鹿も魔法使うし、動物、魔物の呼び分けはそもそもないのかもしれない。

「魔物…、魔法を使う物?ってことは人間狩りってことっすか?」

こっわ。
え、何この人。

「その顔は違うっぽいっすねー」
「ああ、違う。」

しっかりと否定する。

「えー、動物狩り?」
「それは…普通の狩りとはちがうっすか?」
「多分…同じ?」
「んー?」

あー、いかん。
わけわからんことになってしまった。

「とりあえず言いたかったのは狩りに行こうって話だ。それであってる。」
「ふーん?いいっすよ。」

あっさりと許可が出た。
本日は動物狩りが出来そうだ。

「でも若頭ってどのくらい戦えるんすか?」

「ふーむ。命を懸ければ木を切り倒せるくらいには強いな」
「…それは…なんすか。全力疾走したら死にますよって事っすか?」

おい、キース。なんだその目は。
そんな微妙な目でこっちを見やがって。

「別に俺は戦わんよ。」
「というと?」
「キースが全部狩る」
「あんまりっす!」

キースは悲痛な叫びをあげる。

「そもそも一人で狩れるならそれで生計立ててるっすよ」

ごもっとも。
ただ別に魔力を持つ生き物なら何でもいいんだよな。

「大丈夫。なんなら、その辺のネズミでもいいんだ」
「えーと、意図が判らないんすけど。食べるんすか?」
「食べないよ?」

失礼な。
確かに極限サバイバルであれば貴重なたんぱく源足り得るだろうが、今はそんな状況下にない。

「俺が魔抜けだってのはさっき言ったよな」
「言ってたっすね。」

やはり、キースもそのことに大した反応を見せなかった。

「で。それでも魔法が使いたいわけだ。」
「うーん」
「そのためにたくさん欲しいわけだ。動物の死体が。」
「うん…うん?……もしかしてアレクって結構やばい奴っすか?」
「いやいや、動物は魔法を使うだろ?でも呪文を唱えていない。つまり人間とは違う技術を使ってるってことなんだ」
「えーと。アレクは……学者様、みたいっすね?」
「なんだそりゃ」

キースはやんちゃして手が付けられない子供を見るような眼をしていた。
馬鹿にされているのか?
許せない。

「ということですまないキース。ご飯の時は戦闘訓練をするって話だったが、魔法を使えるようになることが俺の目標だ。もちろん、お頭の指示だし訓練は行う。が、暇なときは動物を狩ってきてほしい。」

受けてくれるだろうか。
もちろん、キースが断ったらマークに頼み込むつもりだが、出来ることなら面倒ごとはキースに押し付けたい。
別にさっき馬鹿にされたことを気にしているわけではないが。

「まぁ、毎日何頭も取れない、一頭も捕れない日もあっていいって言うなら俺っちは構わないっすけど。どーせ暇っすし。」
「ああ、それで構わない。」盗賊団シャグラ・アギト
頭:エド(エドガワ シュンヤ)
子分:マーク、キーン

エド
元日本人。
転生者である。
周りの者には言っていない。
かつて息子を亡くしている。
今もし彼が生きているなら、ルーイくらいの年であり、
どことなく面影を見出してしまったエドは彼が馬賃をごまかそうとしていた不法搭乗者と予測しながらも、彼の言うことに乗ってしまった。
そもそも殺すつもりはなかった。
ルーイに内心謝りながらも、次第に自分のことを父親だと思ってくれる彼に強い感謝、そして愛情をもっている。
ーーーーーーというのがストーリ中盤ほどで明かされる偽の情報。
エドに子供などいない。
かつてこの世界に召喚され、直後王と王女、側近の大臣を殺害。
彼は妄想性障害ーーパラノイアの患者だった。
彼は異世界転生は裏切りから始まり、自身の成長を経て妻を手に入れ、彼女らを守るために魔王を倒し、その後は子供を授かりゆっくり売らすものーーーだという強い固定思想を持っている。
あの王国の善悪は今となってはわからないが、彼は妄想に取りつかれていた。
俺は、こいつらに裏切られると。

現実には彼は指名手配を受ける。
しかし、彼の中ではこうだ。
手ごまとして使うはずだった奴隷が逃げた。
捕まえ、拷問の末従順な駒としてつくりかえなけばーーそんな思惑を妄想していた。
彼は国外逃亡。
自由な旅を始めることにーーー。
転生得点のチートを使えばある程度の凶悪なモンスターはとうばつすることができた。
しかし。
彼を慕うものはいなかった。
当然だ。
王族殺しの凶悪犯罪者。
その武力が高すぎるがために、誰も手出しができず、市民は偽りの笑顔を浮かべ、彼を称えるふりをするしかなかったのだ。
彼はしばらくはその国にいたが、ある日思い立ち、そろそろほかの国を見て回りたい。
妊娠していた妻は残念だがおいていく。
また、迎えに来ると約束をして。
そう言って惜しむらく、英雄は国を後にした。
国は、指名手配情報を他国に流すことはしなかった。
何故なら、他国に居所を作ってくれれば、もうこの国には顔を出さないだろうからーーー

しばらく。
マークとキーンと出会い、一年ほど。
彼は約束通り妻を迎えに行った。
妻は死んでいた。
市民が言うには魔王がやったらしい。
英雄は泣き叫び、妻と子の仇をとらんと魔王に挑む。
はたして、英雄は破れ。
自分を磨くため、長い長い旅に出たのだった。
まずはそう、自分を慕うかわいい弟子二人を迎えに行こう。

…妻の死因は自殺である。



マーク、キース
街で行き倒れ、ついに盗みに走ろうとしたとき、
最初のターゲットはエドだった。
この時、エドは二人を衛兵に突き出さず、もうやるなと告げけ解放。
二人はエドを尊敬し崇め、見かけ次第付きまとうように。
エドもまた、二人の事はうざったく思いつつ、嫌いではなかった。
二人とも、エドのパラノイアには気が付いている。
エドの記憶に合わせるため、空白の3か月、という言葉を作り、使っている。
これは、エドが妻と子を失い、魔王に単騎で挑もうとした期間。


キースは女の子の可能性がある。美しい…
濡れたぞうきんをはるかにしのぐ美しさだ

かわいいですね
もし僕がひげ面の中年男性だったら君をほっとかないだろうね

固い!
まるで歯を折ることを目的とした堅パンみたいだ!

時にミステリアスな女性というのは魅力的ですよね。
きっとあなたもミステリアスな一面があるんでしょうね。たとえば名前がないとか

ルーベラ。素敵な名前ですね。ルーとベラの響きが特にいいね。まるでルーとベラが組み合った名前のようだ

やぁ、うつくしいよだれだね。まるでうつくしい犬のようだ。

また君たちに会えて嬉しいよ。え? どれくらい嬉しいかって? 毎朝の厚切りベーコンがいつもより厚切りだった時くらいだよ

まるで何カラットかの何らかの宝石のようだね

おや美しいお人だ。
美の女神に嫉妬されながら生きるなんて大変でしょう?

「私と仕事どっちが大事なんですか?」
「その前に、お金を持っている僕と持ってない僕、どっちがいいか聞いていい?」




『ソード・マジック2』

それは、今ホットなVRMMORPGゲームの一種。
つまりVRの多人数同時接続制のRPGゲームだ。
友達とレベルを上げて一緒に冒険しよう、というやつだ。
…本来ならばそう。

このゲーム、無印はPCでプレイするMMORPGだった。
あまり人気はなかったが、一定数のプレイヤーは存在し、月額制であったためか元は取れていたっぽい。

そして時が流れ、VR技術が発達し、さらにフルダイブシステムという、VR空間上で五感をそのまま体験できる技術が発明され、世界中でフルダイブシステムが搭載されたVRゲームが流行りだした頃、満を持してリリースされたのがこのゲーム。
略して『ソーマ2』。

まぁ、俺が勝手に略しているだけだが。
本来略称などない。

なぜならなんとこのゲーム。
プレイヤーがいないのだ。


その一番の問題は価格設定にある。
これまで普通のゲームしか作ってこなかった会社が、無理して背伸びして何とか捻りだされたこのゲーム。
お値段据え置き34280円。
更に月額4万円ーーー

ーーーまぁ、やる奴なんて誰もいない。
他にももっと安くて楽しいゲームもあるのだから。
何で月額の方が高いんだとか、誰もやるわけ無いだろとか。
突っ込みどころは幾つかあるが、それも仕方の無いこと。

これは仲良くなったゲーム会社の人から聞いたのだが、この値段でも後ろ1年間、1万人ほどプレイヤーが、いなければ元が取れないのだという。

いや、馬鹿かと。

最初の1ヶ月は確かに少数ながらもプレイヤーがいた。
しかしその翌月。

プレイヤーは俺一人となっていた。

多人数同時接続させろよ。
何が楽しくて社員の送るワールドメッセージと世間話せにゃならんのだ。
…新鮮ではあるが、慣れると別にこんな金額払ってまでやることではないなと。
ふと思ってしまう。


そして、現在。
2ヶ月続いたこのサービスが終わりを迎えようとしていた。
理由は至極単純。
会社の倒産である。

非常に妥当な結果だと思う。







月の終わり。
つまりサービス最終日。
この日をソーマ2に捧げることにしていた。

たった2ヶ月。
されど2ヶ月。
思い出はなかなか多く、この世界が消えてしまうと思うと感慨深いものがある。

やけに解像度が高いのに、壁と壁の間の隙間が目立つグラフィック。
同一人物が20人くらい居る村。
何故かHPが0になっても死なないラスボス。
唐突なフリーズからのロールバック。

嗚呼、全てが良い思い出ーーー

ーーーな訳ないです。全く。」
【えー、今まで良い流れだったじゃん】
「バグ直せ」
【本ゲームをプレイしていただき誠にありがとうございます。誠にご勝手ながら、今月末にてサービスを終了させていただきます。】

はぁ。
今月の頭に送られてきたメッセージが再び送られてきて、俺はため息を一つつく。

バグが直って、金額も適正なら人数集まるはずなのに。
ストーリーを進めるにつれ、徐々に明かされていく衝撃の真実。
各所に散りばめられた伏線の数々。
思わず笑ってしまうようなコミカルなサブイベント。
このゲーム、内容だけははちゃめちゃに面白いのだ、実は。

何度もそう訴えかけたが、なんでもプログラマーはもう全員逃げてしまったらしい。
残っているのはサーバーのメンテナンスを請け負う田中(仮)。
そして俺が今会話をしている社長の二人のみ。

新たなことは出来ないし、何かを弄って直す事も出来ない。

「なんでこんな事になってんすか。1の頃はまともだったのに。」

これも、何度も聞いた質問。
そして決まってこう回答される。

【酔ってた。】

返す言葉もない。
さすがに冗談だろうが、それにしてもこの回答が出てくる時点で終わってる。
多分こいつは馬鹿なんだ。

ため息をもう一つ。


「というか、結局ストーリークリアできてないんですけど。せめてラスボス不死身バグだけ直せない?」

何故今日俺はこんなゲームのために1日空けたのか。
まぁ、送別会の意味合いもあるが、大きいところはこれだった。
何とか交渉してストーリーを最後まで見たい。

現在ストーリーは、仲間を引き連れラスボスを倒すというところで止まっている。
もう何度も見たが、ラスボスの戦闘前に謎の人物がラスボスの影から登場する、これが曲者で。
敵陣営の勢力はすべからくモンスターの形をしている。
にも拘わらず謎の人物は完全に人なのだ。
拘束されている様子もなく、むしろラスボスに従っているようにも見えた。
全ての伏線は回収し、さてクリアするぞといったところで新たな謎が出てきて答えあわせはお預けときた。

勘弁してくれ。

「せめてラスボスをキルしてーーいや、もういっそのことストーリーを教えてくれ」
【勘弁してくださいよ。こっちとしても運営としての意地ってものが少なからずあるんで。】
「そのプライドは何かの役に立つので?」
【まぁ、少なくともリリースからサ終まで毎日ログインし続けてくれた唯一のプレイヤーとの話のタネにはなってるよね】
「そんなのでいいのかよ。やっすいプライド。」

さて。
まぁ、こんな回答が来ることは大体予想出来ていた。
仕方ない。
元々ダメ元だったのだ。
諦めはつく。

かといってもうやることもない。
イベントもラスボス戦以前のものは全てクリアしてしまっている。
たった2ヶ月でラスボス以外全クリできるのか、と思うかもしれないが、これには理由があった。

RPGにおいて一番時間のかかる要素とは何か。
戦闘、会話シーン、などではなく。
移動。
それがプレイ時間の大部分を占めているだろう。
ただでさえ広いマップ。
それに加えてお使いやたらい回しイベント。
下手すれば移動だけで2ヶ月以上かかるかもしれない。

そういえばこのゲームはやたらとバグが多い。
…はい、超加速やテレポバグといった便利なバグも存在しております。

やっぱ今日は予定通り行動しよう。
まったりとこの世界を回るのだ。
ラストランジョン前からストーリーを逆さになぞるように。
思えばまともにプレイする時間がないと知ってから移動系バグを自重しなくなったので、どうにも道中の景色を観ることはあまりなかった。
ちょうどすべてを知っているツワーガイドもいることだ。
きっと楽しい一日になる事だろう。


俺はインベントリから石化薬と爆弾、そして風爆弾というアイテムを取り出す。
石化薬は文字通り石化効果を持つ薬。
爆弾は爆弾。
風爆弾はダメージがなく、ノックバックのみを与えるアイテムだ。
本来は緊急脱出や壁に埋まったNPCを移動させたりするアイテムで、あまり使用頻度は高くないだろう。

俺はそれを足元に20個ほど設置し、全て着火。
すぐに爆弾を真上に投げてから石化薬を飲む。
そして石化する直前にジャンプ。

石化という状態異常。
これは特殊で、一定以上のダメージの攻撃を食らうまで効果が切れず、硬化中は一切の移動や行動がとれなくなるという物だ。
石化を使ってくる敵は大体攻撃力が弱いものが多い。
するとどうなるか。
一定以上のダメージの攻撃が存在しないので、死ぬまで殴られ続けることになる。
そんな恐ろしい状態異常なのだが、任意のタイミングで使えるのなら話は変わってくる。

石化中は落下を除く移動ができない。
これは、外部からのノックバックなども含める。
ただ、これがなかなか面倒くさい処理をしているらしく、石化中は加速度を蓄えた状態で保留。
しかし、地面に足が付いた状態で速度が0であれば加速度が即座に消滅するという処理を利用し、蓄えた加速度を0にする。

では足がついてない状態でノックバックを受けると?
本来であればそのまま落下する。
しかし、タイミングよく上から爆弾が降ってきたならーーー?

そう。
爆弾のダメージによって石化は解除され、
蓄えられた加速度は消滅することなく、通常通り発散されることになる。

つまるところ、ぶっ飛ぶ。
本来ノックバックは重複しないのに、加速度を蓄えるなんて処理を行ったせいで、すごいぶっ飛ぶ。

初めてやったときは飛行チートが検出されたらしく、運営から確認のメッセージが届いた。

めっちゃ飛んでるじゃん、とうとうチートか?

と。

今ではこの技術はバグとして報告し、公式公認のバグとなっていーーー


【いや、だからそれやめてって。立派な規約違反だからね?】


ーーー。

ま、まぁ。
公式公認はやや過言だったが、許されはするーー!

「これが最後になるからさ。ラスダン前から世界を観て回りたいなって。時間足りないんだよ」

俺は空を飛行しながら話しかける。

【まー、いいけどね。もう君しかいなくなった時点でアンチチートは切ってるから通知もうるさくないし。】

チート対策はしろ。
誰か入ってきたらどうするんだ。

どこか抜けた回答をするこのワールドメッセージも今日で見納め。
やはりなにか込み上げてくるものがあったりなかったり。


そしてーーー

【あ、やっべ】

ーーーそんな声を最後に、唐突に俺の意識が途絶えた。

ーーーズキリ、と。

痛む頭を押さえながら俺は目を覚ました。
そして思う。

あいつ、今度は何やらかしやがった。

起きて見渡すとそこは平原に存在する砂利の道中。
着地に失敗した…?
いや、あそこからラスダンまでに砂利の道はなかったはずだ。
とりあえずあの状況は異常だった。
原因は彼だろうが、一応報告しよう。

「おい、妙な現象に遭遇したそ。」

2秒、3秒。
沈黙の時間が流れる。

「おい、運営。返事しろ」

…返事は、なかった。

おかしい。
奴は何やらかしても返事だけはした。
ごめーん、とか。
みすった、だとか。

もしかして彼の身に何かあったのだろうか。
少し心配になってしまう。
一旦ログアウトして会社に直接電話をかけてみるか?

そう考えながらも時間は立ち、やはり返事はなかった。

「田中(仮)さん、このチャット見えてますか?」

サーバー管理者にもコンタクトを試みるが返答は無し。

しかたない。
電話をかけよう。
流石に明日のニュースで彼が死んだなど見ると気分が悪い。

俺はメニューを開…こうとして固まる。

開けない。

「なんだ?フリーズか?」

思い当たる原因はそれくらい。
俺は思いっきり走り出した。

ロールバックは、起こらない。

いったい、どうなっている?

なにか、何かが引っかかっている。
何かを見落としている気がする。
もどかしい。
もう喉あたりまで出かかっているのだがーーー

ーーーッ!!!!!

「頭痛ってなんだよ…?」

このゲーム、というか全てのVRゲームでは痛覚を与える機能、及びシステムの導入が禁止されている。

痛みなど、感じるはずがないのだ。

「なにが、起こってるんだ」

返事は帰ってこない。

とりあえず、強制ログアウトを試みよう。
ゲームソフトではなく、ゲーム機本体に組み込まれている安全装置。
そのうちの一つが強制ログアウト。
使ったことがなかったので今まで忘れていた。

たしか、自分で自分の頭をぶん殴るんだったか。
多分間違ってない。
最初これを知ったとき笑った記憶がある。
たしかに本来とるはずのない行動を設定しなきゃならないのはわかるが流石におもしろすぎる。

それはさておき。

「ふっ」

俺は自分の頭を殴った。

「ぐあぁ、いってぇ!?」

痛かった。

おいおい、本当にどうなっているんだ。
何故痛覚がある?
何故強制ログアウトが発動しない?

本体が壊れて現実でも自分を殴っている?
少し考えたが、それはない。
現実でも動けるんであればベッドの感覚を感じるはずだ。

「あー、くそいてぇ」

まぁいい。
頭が痛いのは良くないが、自分でこの状況がどうにもできないのはわかった。

ならサービス終了を待とう。
勝手にログアウトするはずだ。
接続先のサーバーが閉じるのだから。

それまで何をするか。

観光だよな。
元々その予定だった。
ツアーガイドはいなくなってしまったが、十分楽しめるだろう。

腰についているポーチを開き、手を入れる。
しかし、インベントリは開かなかった。

代わりに、頭の中に、インベントリに何が入っているのかが浮かんでくる。

「ッ!?」

思わず手を引っ込めた。

駄目だ。
解らないことが多すぎる。
考えるだけ無駄なのだからすべてを受け入れよう。

再びポーチに手を入れる。
頭の中に浮かぶイメージは、こんなものだった。

1 ショートソード
1 木製のシールド
3 薬草

「は?」

全部消えていた。
俺の2ヶ月が。

いや、待て。
ショックを受けている場合じゃない。
この3種類のアイテムの並び、見たことがある。

そう、ゲームスタート時の初期アイテムだ。

もしかしてあいつ、俺のプレイヤーデータ消去しやがったのか?

再燃する怒り。
落ち着け、ここで切れてもあいつはいない。
ログアウトしたらクレームの電話を入れてやる。

まぁ、仕方ない。
観光しようと思っていたが、こうなってしまっては自由に歩くことはできないだろう。

いや、前向きに考えよう。
この際だ。
全てのイベント、いろいろなバグを知っている今なら一日でどこまでストーリーを進められるのか。
計測はしないが、タイムアタックまがいのことをしてみよう。

そうと決まれば急がねば。

ーーなんでこの人こんなに急いでるの?
と言われようと俺は歩みを止めることはないだろう。
何故なら今の俺は気持ちだけはRTA走者なのだから。









再序盤から使える移動バグは見つかっていない。
それに、少し進むと強制戦闘があるはずだ。
なのでとりあえずそこまでは通常通り歩くとする。



「ぴー」

出たな、『弱ったピクシー』。
宙にふわふわと浮かぶ小型犬くらいの大きさの妖精。
最初に戦闘のチュートリアルとして戦うザコ敵だ。
こいつ、地味にユニークモンスターで、ここでしか戦えなかったりする。
『ピクシー』には会えるが、『弱ったピクシー』にはこれ以降会えないのだ。
それはさておき、困ったことが1つある。

ポーチからアイテムを取り出す方法がわからない。

いや、そもそもこのタイミングで武器を装備するチュートリアルが開始されるはずなのだ。
しかし、それがなかった。

どうやって取り出したもんか。

と、その時。

ひゅっ。

俺の頭のすぐ横を何かが通り抜けていった。

後ろを振り向くと、少し離れたところでこぶし大の石ころが転がっていた。

ーーーもう戦闘が始まっている!

慌てて戦闘態勢をとる。
しかしどうするか。
武器なしに戦うとなると、素手で戦うことになるが…
このゲーム、素手、めちゃんこ弱いんだよなぁ。

でもまぁ、やるしかないわな。

弱ったピクシーは今さっき攻撃を行ったのでしばらくはクールタイムだ。
俺は一気に距離を詰める。

そして、こぶしを振りぬく。

「ぴっ!」

俺のこぶしを受けた弱ったピクシーは吹っ飛び、地面で2、3回バウンドした後沈黙した。

なんでぇ…?

素手の攻撃にノックバックなんてついてない。
というかそもそも威力が弱すぎてザコ敵でもかなりレベル差がないと一撃で倒せない。
疑問は残るが、とりあえずドロップを回収しよう。

このゲームは倒したモンスターの死体が残る。
それに近づき収集アクションを使用することでドロップを回収できる仕組みだ。

収集アクションは、ポーチに片手で触れながらもう片方の手で死体に触れれば実行される。

早速やってみる。

しゅわぁ、と。

弱ったピクシーの死体が青い粒子になってポーチに入っていった。

さて、取り出す方法がわからないままポーチの肥やしが出来てしまった。
とはいえ、この後のイベントでこいつのドロップが必須なので回収だけはしなければならなかった。

これでチュートリアルは終了だ。
もう?
といった感じだが、このゲームはオープンワールドで、モンスターをあしらえるならどんな場所にでも行ける。
かなり自由度の高いゲームだ。
ストーリー通りに進めるのが一番楽しいと思うが、多分俺の予想ではこのチュートリアルの後すぐラストダンジョンに行き、ラスボスと戦うこともできるはずだ。

あいつ死なないからやらないけど。

とにかく、あとは自分たちで好きに遊んでくれ、ということだ。


「あ、そうか」

このまま最初の町に行こうと思っていたが、多分効率的にはここからもう次の町に向かった方が早い。

最初の町では、『次の町に行こう!』以外のイベントは最初の町のみで完結するので、先に移動手段や強い装備を手に入れた方がいい気がする。
道中の敵も、こちらが即死するような強さではないためかなり現実的なチャートだと思う。

よし、そうしよう。

俺は進行方向を斜め右に変更し、歩みを進める。


道中、自分よりレベルが2か3ほど高いモンスターが出てくるが、すべて無視する。
武器を装備していない時点で戦うだけ無駄だ。

基本歩いて、発見されたら走り、索敵を切ったらまた歩くを繰り返す。
そうしながら、次の町でのチャートを考えていた。


優先度を決めよう。
まず一番優先度が高いものは…
やはり『馬車』。
いや、馬車はあまり狭いところで使えない。
ならば先に裏路地クエストで『盗賊グローブ』か?
盗賊が候補に入るなら今のうちに『剣ダッシュ』を取るのもありか。

そういえば次の町のメインは『洞窟』か。
ならば刀を拾ってレベル上げるのが吉か。

「よし、まずは刀を手に入れよう。」

刀の入手経路は、この町では一つしかない。

サブイベント『追い出された刀鍛冶』
このイベントは、次の町の武器屋に売っているアイテム『ゆがんだ刀』を購入。
その刀は1発何かを攻撃すると折れてしまうので、『折れた刀』を武器屋に持っていく。
するとなぜか急に店員が身の上話をし始めるので適当に相槌を打っていると、刀を作るために『良質な玉鋼』というアイテムを持ってくることになる。
そして玉鋼を持ち込むと、晴れて『白刀・滝』が手に入るのだ。
白刀は序盤にしてはなかなか攻撃力が高く、中盤くらいまでは使い続けられる優秀なアイテムだ。
さらに、白刀を中盤の町の鍛冶屋に持っていくと、
「これはうちの馬鹿弟子の刀じゃないか。どれ、俺が仕上げてやろう」
とかいって、『銀刀・滝壺』に変化する派生イベントも存在する。

ただし、玉鋼の入手はこの町では裏路地に高値で売られており、序盤からこのイベントをクリアしようとするとかなり頑張らないといけない。

俺は武器屋に入る。

「いらっしゃいませー」

えーと、ぐねぐねソードは隅の樽の中に突っ込んであったっけ。
あ、あった。

特に探すまでもなく発見した。
雑に扱われた刀を樽から引き抜く。

曲がっていながらも、それはまごうことなき刀であり。
店の奥の炉の炎をギラリと反射させる。

この刀が最後の方まで見つからなくって、イベントが埋まらなかったんだよなぁ

しみじみ。

「これくださーい」

一直線にカウンターに向かうと、店員が喋る。

「え?そんなもの買うんですか?もっといい武器がありますけど」





ーーーーーは?

え?


なんだ、こんなセリフ知らないぞ。
というか、店員が今までほかの商品の購入を促すなんて行動をとった姿なんて見たことがなかった。


……。

…………。

……………………。

「あの…?」

やっぱりあれか?
あれなのか?
薄々そうじゃないかって思っていたが、やっぱそうだよなぁ。

「君、年齢は?」
「…23ですが。」

はい、確定してしまった。
ゲームでは主要キャラクターにしか年齢は設定されていない。

間違いない。
ここは、ゲームそっくりな異世界だ。




ここは『ソード・マジック2』によく似た世界。

どうやら俺は知らぬ間に異世界に来てしまったらしかった。

原因は不明。
リアルで死んだからーーーみたいなのは勘弁してほしい。

だが、そんなことは置いておいて、先にやらねばならぬことがある。

「えーと、そんなにその『曲がった刀』が欲しいんですか?」
「欲しいです。売ってください。ついでにポーチの使い方も教えてください。」
「あ、欲しい…って、え?ポーチの使い方?」

NPCに意思があるのなら、聞けるうちに聞いておきたい。

「ポーチは、えーと。なんか直感で使ってるので説明が難しいですね。」
「そこをなんとか!」
「待ってください、少し整理しますから。」

この武器屋の店員はいい人なのかもしれない。

そんなことを思っていると、店員の考えがまとまったようだ。

「まず、ポーチに手を入れてください。」
「はい。」

言われた通りに突っ込む。
やはり、頭の中にインベントリのイメージが浮かんできてすごく変な感じがする。

「何のアイテムが入っているかわかりますよね。」
「わかります」

「では、そのうちの、欲しいものを欲しいって考えながら手を握って、ポーチから手を出してください。」

とりあえず『ショートソード』を取り出そう。
どうせ使わないし、ここで売っておきたい。

俺はショートソードを頭の中で思い浮かべ、

「欲しい!」

と叫びながら手を握る。
何か物体をつかんだ感覚。

「あ、別に口に出さなくても大丈夫ですよ」

そのまま手を抜くと、そこにはショートソードが握られていた。




弱ったピクシー
商人を襲い、貴重なアイテム『緑の魔石』を奪ったピクシー。
護衛にやられ、負傷している。

最初の町の重要クエスト
『病気の母親』
ヒロインちゃんと初邂逅。
緑の魔石を渡すイベント。
緑の魔石を使用することで母親の病気が治り、
ヒロインちゃんは感謝し、以降の旅についてくることになる。
ここでヒロインちゃんの妹もちらっと見られる。

緑の魔石…ユニークアイテム。
世界で一つしか手に入らない。
万病を治すといわれている。
(しかし、実際の効果は異常な再生能力と、不死の呪いの付与)


ラスボス
死なないのはバグではなく仕様。
彼女には呪いがかかっている。
不死の呪い。
どんなに苦しもうと死ぬことができない呪い。
倒すには呪いを解く必要がある。
ただしそのためには
(正体はヒロインちゃんの母親。
異常再生によっていびつに再生した体は異形のそれ。
ゲームではフラグの関係でこれをしなくてもラスボスとたたかうことになる。
イベントは、ゲームではフラグを踏むまで進行しないため、クリアするしかないが、ゲーム世界では時間が流れるため、放っておくと母親は病死する。
ラスボスは出現しない…はず。
後ろから出てきた人間はヒロインちゃんの妹)





PC達は祖国ノルジアの戦力として、敵国ルーニソルアに進行する

ルーニソルアは小国だが肥沃な土地を持っている。
ノルジアはかつてよりノルジアに外交的有利をとり、己が懐を温めていた。
しかし、ある年、大規模な干害が起こり、多くの国民が飢えに苦しむこととなる。

この干害はドラゴンによるもの。

機能がマヒしたノルジアの統制は危うくなり、挽回の策として、"国の敵"を作り上げることにした。
隣国のルーニソルアに戦争を吹っ掛けたのである。
ルーニソルアは肥沃な土地を活用し、かつてない干害という災害をゆうにいなし、いつもと変わらぬ生活を送っているという。
そんな国が隣にあればどうなるか。
ノルジアの国民はルーニソルアに流れて行ってしまう。
統制なんてあったものではなかった。
それら資源をノルジアのものとすれば、飢えはすれど餓死者は格段に減るだろう。
餓えた国民に職を与え、失いつつある統制を取り返す一手であった。
全てはノルジアのため。
他国に略奪行為と弾劾されようと、我々はやるしかないのだ。

しかし、問題もある。
職を欲するものが多すぎるのである。
国が徴兵するのは簡単だ。
しかし選ばれなかったものはどうなる。
ーーそれは消して慈悲ややさしさなどではない。
それらが徒党を組んで革命など起こそうものなら今のノルジアでは、もしかするかもしれない。
可能性は低いがゼロではない。
ーーそんな、"保身"から来た疑念。
遺恨を残さぬよう希望者を全員雇用したい。
しかし金が足りぬ。
そんなときある大臣がこんなことを言った。
多いのなら減らせばいいのです。

あくまで、最初の任務として、強力な魔物の討伐に向かわせ、ふるいにかければいかがでしょう。
、、恐ろしい言葉であった。
しかし、心を殺せば、人として大事な部分をすてされば、それはなんとも魅力的な案だった。



それから、国は勇敢な者を募った。
我が国の兵として身を粉にしてくれる者を。
PC達は国の思惑など知らず、不幸にもそんな徴兵に応じてしまった者たちである。

第一話 蟲毒
流れはまずこの国、自身の境遇に対する描写、徴兵の描写、洞窟に行く描写、ボスから逃げる描写
食料の調達任務と評して強力なモンスターが住む場所に向かわす。
しかし指揮官はそんなことを聞かされていない。
このことを知っているのは国の上層部のみである。
生き残った者たちの確認、グループ分け
給金、買い物


第二話 義勇戦争

ひと月後
ルーニソルアにて革命勃発
ルーニソルアに出兵
革命軍との戦闘
エレノアとの出会い
革命軍の小拠点侵攻
革命軍扇動者との戦闘
ルーニソルア兵によるノルジア兵の殺害
宣戦布告


第三話 

ルーニソルア
エレノアの拘束
エレノアの処刑
エレノアの逃亡
PCら戦犯として拘束
脱出
真相を知る
選択ーー処刑、革命、逃亡
革命ーボス戦



戦争の流れ
ノルジアの工作員によってルーニソルアで扇動者が出現
ルーニソルアにて革命勃発
ノルジアは助太刀と称してルーニソルアに出兵
ルーニソルアの軍服を着たノルジアの工作兵によりノルジア兵士が殺害される
報復戦争の宣言



一話ここは王国ノルジア。
ノルジアは今、かつてない大干ばつに襲われていた。
井戸は枯れ、作物は朽ち、多くの国民が飢餓に悩まされていた。
君たちはそんな国に住むちょっと腕に自信がある荒れくれもの。
君たちもまた飢えに苦しむ荒れくれものであった。
そんな折、わが祖国ノルジアが兵の募集を募り始めた。
しかも参加資格は成人であることのみ。
国の兵士になれば最低限の食料は保証されるし、給料も悪くはないだろう。
これは行くしかねぇ、と。
君たちは兵士募集に志願したのだった。


集合場所に指定されていたのは王城前の野外広間だった。
あなたたちのほかにも目が回るほどたくさんの志望者がひしめき合っている。
演説台に乗った、ノルジア兵の鎧を着こんだヒューマンの男が、叫ぶ。
何かの呪文を使用しているのか、群衆の後ろの方にいる君たちにもその声がはっきりと聞こえた。
「ようこそ、勇敢なる志願者たちよ!」

「私は君たちの所属することになる、第四大隊の隊長である、デモゴルゴンである!」

デモゴルゴンは言葉を続ける。
「私は長々しい話は嫌いだ。用件のみ話そう。」

そういって一呼吸開ける。
全員の意識が彼に向かったところで次なる言葉を発した。

「ーーーおめでとう。試験などは何もない。君たちは晴れてこれより、我らがノルジアの騎士団だ!」

歓声も一止み。
いろいろな声が飛び交う。

そうとう苦しんできたのだろう。
安定した職を得ることができ喜びの声を上げるもの。
おいおい、太っ腹じゃないかと盛大に笑うもの。

君たちも少なからず喜びを混じているだろう。

デモゴルゴンは最後に言葉を締めくくる。

「以上!さぁ、中に入れ、新兵ども!開門!」

それから、君たちは宿舎に案内される。
寝床を確保し、荷物を置く。
城の使用人がこれからの予定を伝える。

「この後、早めの昼食をとっていただき、その後再び先の広間に集まってほしいとのことです。それでは食堂にご案内いたします。」

食堂にはすでに多くの人がおり、新米の兵士だけでなく、従来よりの兵士もここを利用するようだ。
君たちは長い列に並び、料理を受け取り席に着く。
久方ぶりのまともな食事だ。
腹が満ちれば何でもよいと考えていたのはとうに昔の話で、
今では目の前の食事に一心不乱にがっついている。
メニューは肉料理をメインとして、気持ち程度の乾パンが添えられていた。
食事も終わり、新兵たちは広間に出る。

「さて、今日よりノルジアの兵士となったお前たちに、早速だが最初の任務を与える。」
「皆も知っている通り、ノルジアは現在大規模な干害に悩まされている。しかし、はいそうですかと食うことをあきらめるわけにもいかぬ。そこでだ、たとえ焼け石に水だろうが、我々ノルジア兵で、この国に食料を入れようと。この度新兵を募ったのは、ひとえにこのためだ。」
「これより我々第四大隊はノルジアを北進し、ゾムの森林、およびゾム山にて狩り、採集を行う。」
「まず、移動する前に、4〜6人程度の小隊を作り、またその中から一人ずつ小隊長を決めてもらう。」



ボスはドラゴン
もともと国は蟲毒と化した洞窟のモンスターに処理させる予定であったが、
実はドラゴンが飛来しており、それを食っていた。
干害はこのドラゴンの仕業。

ドラゴンのブレスは水。あのドラゴンの事件からひと月。
午前中の訓練を終え、午後に備えて昼食を食べていた時だった。
有事の時に鳴らされる、緊急招集の鐘がなる。
君たちは広場に向かうだろう。
第一から第四大隊までの兵士が集まってくる。

デモゴルゴンは君たちの前に立っており、
あの足場には別な男が立っている。
この国のすべての兵力を好きにできる男。
ノルジア兵士の総括、サザーン。

「本日、隣国ルーニソルアより救援要請を受けた。」
「用件はこうだ。”クーデター勃発。至急救援求む。謝礼として今後5年間の物的支援を無償で行う”」

「無償の物的支援。これが意味するところ。しってのとおり、我らがノルジアと違い、ルーニソルアでは水不足問題を解決している。」

ヨグソトース教団教祖殺害の容疑を晴らすため調査に出るPC達。
しかし、出るわ出るわ自分たちがやったという証拠。
途中で出会うは探偵を名乗る女。
PC達を調査しに来たらしい。
そのうち見つかる森の中。
小さな小さな木のおうち。
中に入るといろいろな書物、そして鍵のかかった地下への入り口。
鍵を開けようとすると鳴り響く。
大きな大きな警報機。
小屋の中に響く謎の声。
幼い少女の声がする。
ようこそ君たち昨日ぶり。
仲間がいいデータをとれたと喜んでたよ。
わたしはこの小屋の地下に住んでいる、そうだな。
みーこちゃんとでも呼んでくれ。
訳あってここから出られないが、ーーおお、いいものを持っているじゃないか。
PC4のケータイに着信音が鳴る。
手に取ると、出るまでもなくビデオ通話が始まった。

「やあ、君たちと話すのは初めてだね。」

画面には幼女が映っていた。
ほら、全員にわたしのプリティな顔が見えるようにその通信機を持ち上げておくれ。
さて、よくここがわかったね。
何しに来たんだ、と聞くのは愚問かな?
私の推測だが君たちは逮捕されそうになってて困っているんだろう。
まぁそうだろうね。
なんたって君たちがやったんだからね。
正確には君たちの体が、だが。
詳しくは語らないが、君たちは世界を救ったんだ。
だがあまり未来を弄繰り回すのもよくないな。
二体目が来たらたまったもんじゃない。
ということでわたしは君たちの無実を作る手伝いをするよ。
さぁまずは外に出るんだ。
外に出るとあたりは真っ暗だった。
思わず時計を確認するだろう。
時刻は未だ昼時。
あー、不味いことになったね。
携帯から声が聞こえる。
君たち、絶対に上を向かず、そのまま回れ右して小屋の中に引き返すんだ。
今、落とし戸のロックを解除したからそのまま梯子を下りてきてくれ。

梯子を下り切るとちょっとした空間。
壁質はなめらかで白い。
そして、どこか不気味な、形容しがたい違和感を感じる。
再び携帯から声が聞こえる。

その部屋で衣類以外のすべての持ち物を捨て、奥の通路に進むんだ。
事態は一刻を争うが、それと同じくらい大事なことだ。
絶対に、”鋭利な角度を持つもの”を持ち込まないでくれ。
もちろん、この通信機もだ。
ここに置いていけ。

そういうと、通話は一方的に切れた。

通路を進むと扉がある。
どうやら二重扉のようだ。

扉を二つくぐると、先ほどPC4の携帯の画面で見た背景がそこにあった。
来たね。時間がない。説明は後でする。とりあえずセッティングは終わったから、その箱の中に入ってくれ。
指さされたのは丸い、大きな箱。
ここで気が付くだろう。
この部屋には角がない。
だが、そんなことを考えている暇もないようだ。
「早く!」
君たちは幼女に押され、大量のコードやパイプ、ボタンやレバーが付いた箱の中に君たちは入っていく。
これを持て。
そう言って何か赤色の紙を渡してきた。
離すなよ。
幼女は少し離れ、手元のレバーをおもむろにつかむと、それを下げた。
箱の扉が閉まる。
なーに、少しちくっとするだけだ。シミ一つない天井を見てるうちに終わるさ。
君たちの周りの壁が光りだす。
最後に、これだけ伝えておく。
向こうに着いたらわたしを探せ。
そして、その赤い紙を渡すんだ。
そうしたら優しく状況を教えてくれる。

そして、光が最高潮に達したときーーー

すまないね、ミコ。
どうやら私たちはここまでみたいだ。

ーーー独り言のような、そんな声が聞こえた気がした。


唐突に。
光が消える。
未だ目はちかちかするが、とにかく光は収まった。
ぷしゅー、と音を鳴らし、扉が開く。
しばし目を慣らし、箱から出ると、相も変わらずそこは、あの角のない部屋だった。
ただひとつ、変わったところがあるとすれば、先ほどまで話していたみーこと名乗る幼女がいないことだろう。

探索開始

時間についての本など。
しばらくするとみーこが部屋に入ってきた。
そして君たちの存在を認め、固まる。
一瞬の間を置き。
みーこが激高した。
「おい、使ったのか!これを!動かしたのはどこの馬鹿だ!」
「どっちだ!どっちから来た!」
赤い紙を渡すと、急に落ち着く。
いや、落ち着いたのではなかった。
彼女は驚き、呆然と立ち尽くしていた。
「まじかぁ。」
そういってイスにぽすっと腰掛けた。
みーこは今度こそ落ち着いて、君たちに話しかけた。
「やぁ、さっきぶり。といってもわたしにとっては初めましてだ。ようこそ、未来人。ここは過去だ。といっても、せいぜい三日前だがね。」
さて、時間はある。
少し話をしよう。
まず、君たちが過去に飛ばされた理由。
これは簡単だ。
おそらく
現在ーー失礼。未来において世界は滅んだ。
そしてそれを救える、というか手が届くのが君たちしかいなかった。
単純明快だろ?
では次は、何が起こっているかについて話そうか

ところで君たち都市伝説だとか好きかい?
たとえば、そう。
太平洋に沈む巨大都市、だとか。
なぜ今こんな話をするのかって?
はは。
三日後、これが浮上し、世界が滅ぶ。
君たちはアイデアロールを振る。
成功するとこの話を信じられるだろう。
SANC
そして、みーこは続ける。
ーーこれだけならまだよかったんだがなぁ。
…我々は明日か明後日か、この原因を潰した。
そしてそれは成功した。
だが、今度は別な要因で世界が滅ぶようだ。
…今から言う言葉は絶対に口に出すなよ。
君たちには強すぎる言葉だ。

ーーーアザトース。
そう呼ばれる災厄が今から三日後に招来される。
するとまた世界が滅ぶ。

困ってしまうな。
こんなにぽんぽん世界が滅ぶと。
そして、まだある。

それは君たちだ。
君たちが世界を滅ぼす可能性がある。
ああ、いや。
君たちが悪いわけではない。
強いて言うなら3日後の私が悪い。

君たちに理解できるとは思わないので、かみ砕いて説明しよう。
おそらく、タイムパラドックスという言葉を聞いたことがあると思う。
あれに近い。
そもそも、君たち人間の唱える時間論は間違っている。
だから理論上の矛盾が発生するんだ。
っと、話が逸れたな。
まぁ、君たちは簡単に、過去を変えすぎると世界が滅ぶ、とだけ覚えておけばいい。
そこで、これをやろう。

みーこは何か丸い、ビー玉のようなものを渡してきた。
これは時間因子が今の座標±…はぁ。
つまり!
これは君たちがこの世界を滅ぼそうとすると色が変わる。
平常時は見ての通り透明だ。
そして危なくなるにつれて緑、黄、赤、黒と変色していく。
そして滅ぶギリギリになると、消滅する。
まぁ、そうならないようにしてくれ。
とはいっても、おそらく今あげた3つの中で、こいつで世界が滅ぶ可能性が一番高いだろうな。
それもダントツで。
まぁ、もともと滅んだ世界だ。
成功したら儲けもん、くらいに考えていていい。
リミットは2日と少し。
その間に、過去改変を最小に、二回世界を救ってくれ。

ここからは具体的な君たちの動きだ。
まず、確定している事象の確認だ。
==という宗教団体。
こいつらが世界を滅ぼす第一号だ。
おそらく、君たちの世界でニュースが流れたんじゃないか?
おそらく、教祖のみ殺害で君たちは逃亡、だと思うがどうだろうか。
そうだな。
であれば二日後の深夜、これを実行せねばならない。
そして、そのあと対処すべきが、アザトースの招来。
これも現在において確定してしまっている。
だが、これを良しとするわけにはいかない。
ここが一番の大博打。
過去を改変し、アザトースが招来されなかった非選択時間軸にシフトする。
どの程度揺れるかはわからない。
もしかしたらそれ以外完璧に過去の事象をなぞったとしても、それだけで3つ目の世界崩壊シナリオが完成するかもしれんが、他に手はない。
自分たちの悪運を信じるんだな。

で、それらが終わって、君たちが全員ここに帰ってきて、現在に戻ったら、初めて完了だ。
せっかく2回世界を救ったのにそのあと油断して滅びました、なんてもったいないことはしないでくれよ?

さて、これらを実行するにあたり二つ問題点がある。
一つ目、アザトースをどこの馬鹿が招来するのか不明。
二つ目、君たちは今、角ばった時間軸の住人に目をつけられている。

一つ目に関しては2日目の深夜までになんとかして見つけよう。
二つ目はどうしようもない。
逃げろ。
それしかない。
理論上、倒すことはできるが、どうせ君たちが過去に居続ける間増え続ける。戦うだけ無駄だ。
だがまぁ、一応こいつを渡しておこう。
そう言ってみーこはまた丸いものを渡してきた。
今度のは手のひらサイズで、ピンクの色をしていた。
こいつを例のバケモンに当てると、ダメージを与えられる。
奴らはこっちでケガするなんて思っちゃいないだろうから、 びっくりして逃げだすだろうな。
ただし、一回きりだ。
さっきも言ったとおり驚かせるだけの代物。
信用はするな。

あとあんまり力入れて握るなよ。
君たちの手が消える。

ーー気をつけろ。
奴らは角からやってくる。

ってな。
この機械を最初に試した奴の言葉だ。

おそらくこの部屋を出たとたんすぐに出現するだろう。
急いで梯子を上って、すぐに離れるんだ。

もちろん、わたしも援護する。
少し待て。
みーこは3つ足のイスを器用に回転させ、何らかの機械に向かう。
PC4の携帯に着信音がなった。

PC4が手に取ると、出るまでもなく、ビデオ通話が繋がった。

「じゃあ、急ごう。二日目の深夜までにはーー協会に居なきゃならんからな。」

なぜPC4に来るのか。
一番やり取りの少ない通信機だからだ。





変色するガラス玉
複数の時間因子を持つ球体。
現在の座標を記憶させることで、そこからどれだけ時間軸がぶれたかがわかる。ブレ幅によって、透明、緑、黄、赤、黒と変色してゆく。
これは、それぞれ緑色の座標±いくつか
黄色の座標±いくつか、といったふうに、複数の時間因子を範囲ごとに色が違う玉に埋め込むという仕組み。

ピンクのボール
触れたものの時間因子の座標を強制的に改変する機械が、中に入っている。
中の機械はピンクのガワが損傷してから数秒間のみ昨日するので、地球の重力に引っ張られて無限にマントルを消し続ける地球破壊兵器にはならない。
ピンク色のガワは頑丈だが、腐食に弱く、ティンダロスの猟犬なんかにあたると壊れる。


過去改変度
1〜100
100になると、怒り狂ったティンダロスの王、ヨグ=ソトースが現れる。
ヨグ=ソトースの力で世界崩壊は免れるが、二体の神格でのSANC、ティンダロスの王による攻撃によりPCはロストする。
最後のアザトース阻止で50たまる。
過去を改変するような行動をとるとたまる。
PCが過去に存在するだけで過去改変は起こっているが、その辺含めてたまり具合はKPのさじ加減で。
たとえいくつかやらかしても、あんまりにもあり得ない過去改変をしなければ許してやってもいいと思う。




イス人との会合


行方不明事件などの記事も手に入る

地球にいるのは1里
どこかからか飛んできたのが5人
5人は1里に装備などの支援を受けるため、森に寄った


行方不明事件
女児が3日の間行方不明になった事件。
2020年初夏、当時小学2年生だった藤山 みこ(7)が、近くの公園に遊びに行ったきり帰ってこなくなってしまった。
夕暮れ前に公園から帰路に就いた姿を最後に目撃情報が途絶える。
警官20人以上動員し捜索を行ったが、発見できず。
聞き込みもむなしく、まるでその場から消失してしまったかのように、夕暮れ時を境に目撃証言が途絶える。
組織的な誘拐犯罪の可能性を視野に入れ、他県まで捜索の範囲を拡大するが、証拠といえるものは出ず。
3日後、進展もなく捜索の打ち切りのうわさが流れ始めたとき、藤山 みこを保護。
彼女はこの3日間の記憶が混濁しており、しっかりとした受け答えはできるものの、現実的ではない事象ばかり口にする。
精密検査も行われたが、脳に異常はなく、やはりなにかの犯罪に巻き込まれた可能性があるとして、警察は調査を続ける模様。

みこの証言記録ー書き起こし
「ママに暗くなる前に帰ってきなさいって言われたので、暗くなる前に公園から出ました。
でも気付いたら森にいました。
私の中に人がいました。
名前は無いです。
私の中の人は何でも欲しいものをあげるから少し体を半分ほしいっていいました。」
「みこ、ふざけないで話しなさい」
「ふざけてない!」
「恥ずかしいから変な夢の話はやめて。お巡りさんみんな真面目にやってるのよ」
「夢じゃないもん!」
「あんたいつもそうやってふざけてばっかで!」
「まぁまぁ、おかあさん、落ち着いて。みこちゃん、本当にあった話なんだよね?」
「(涙ぐんだ声)そうです」
「おかあさん、みこちゃんはまだ幼いですから、記憶の整理がうまくできていないんでしょう。おそらく現在は記憶が混濁している状態です。
ただ、記憶は時間がたてばたつほど曖昧になっていくものですので、今のままでも、話を聞くだけ聞きましょう。」
「親でもないあなたに何がわかるんですか!?この子は面白がって変な嘘をついているだけです!」
「嘘なんてついてないーーーーっ」
(するどい破裂音のような音)
「おかあさん!やめてください!おちついて!」
(激しい物音)
「離して!この子はこうしないとわからーーー」
「おい、そこのお前」
「〜〜っ!またそうやってふざけて!」
「お前はこの子の母親なのだろう?どうして打つ?どうして平和的な手段を取らない?私には到底理解できない行動だ」
「さっきからなんなのその喋り方!今すぐやめないとまた打つわよ!」

収拾がつかなくなりこれ以降聴衆不可と判断。
中断ー06:24


補遺:次回の聴衆は予定されていない



その3年後、再び行方不明に

都市伝説的なものになり、
深夜森の中で女の子の亡霊がすすり泣いているーー
などの情報もあるかもしれない




藤山 みこ
小学5年生の女の子。
3年前の夏、イス人より精神支配を受ける。
この支配は非常に弱いもので、元の精神は元気。
しかし、母親の教育が厳しすぎ、心を閉ざしてしまった。
現在では表に出てくることはなく、イス人が体を動かすことがほとんど。


イス人
森の中に研究施設を作り、ここ周辺にやってくるイス人に対しての支援を行っている。
みこのことを気に入っている。
もともとみこを選んだ理由は長期滞在を目的としているため、寿命が長いほうが都合がいいから。
ただし、かなり無理な方法でみこの体を乗っ取ったので、ティンダロスに追われている。



時渡
ヨグソトースが召喚され、世界が滅亡する未来が予測される。
しかし、イス人らがPCらの体をつかい、ヨグソトース教団は壊滅させる。
しかし、ヨグソトース教団がけん制していたアザトース教団が活発化し、アザトースが出現し、世界の終わり。
そこでみーこによってタイムスリップを行い、アザトースの招来を阻止しようと動く。
しかし、それは確定した未来を変える行為。
理論上では改変は可能だが、この世界がどうなるかはわからない。
しかも不幸にもタイムスリップそのものをティンダロスにみられてしまう。
猟犬の追跡を振りながらアザトース信者壊滅。
しかし、時間軸が大きく揺れ、非選択時間軸に接触し、さまざまな、あったかもしれない現在(過去の)を見ることになる。
ここでティンダロスは退散する。
感動シーンが流れる中、揺れはどんどんと大きくなり、時間軸が歪み、時間因子が座標を確定できなくなってくる。




神が顕現した


時間軸ー過去から現在までは一直線となっている。
現在以降は面として無限に分岐している。
分岐した未来の内選ばれなかった線はパラレルワールドや並行世界ではなく、
存在しない時間軸ということになる。
時間因子の存在する軸のみが、正史である。
非選択時間軸、未来には時間因子が存在しないので、基本的には直接干渉することは不可能。
また、観測できないが、分岐点に角はなく、湾曲している。
これは、下記の角の時間軸に沿ってこの軸で選択されるため、安定したものとなる。
なので、この世界の現在とは、角の時間軸の近未来である。
しかし、この湾曲した時間軸こそが正史であり、
よって、角の時間軸で確定している近未来を変えると、それに合わせて角の時間軸における現在は改変される。
これが角の時間軸は不安定だといわれるゆえんである。

角の時間軸ーティンダロスの存在する時間軸。
上の時間軸とは全くの別物。
分岐点は角ばっており、真の意味で現在がリアルタイムに反映されるため、非常に不安定な時間軸。
湾曲した時間軸とは、角の時間軸に沿って後から生成される。

時間因子ー時間軸上の座標を示すアンカーのようなもの。

未来ー未確定の時間軸。
   この時間軸には時間因子は存在せず、直接干渉は基本的には不可能。
   しかし、過去や現在を操作することによってある程度向かう未来を選択することは可能。

近未来ー角の時間軸での現在。
たしかに、湾曲した時間軸では確定していない、まだ時間因子も存在してない未来だが、角の時間軸ではすでに確定しているため、ここを改変すると角の時間軸に修正力が働き、角の時間軸に大小影響が出る。

非選択時間軸ー過去の未来に存在していた時間因子の存在していない過去、現在。
   基本的に干渉は不可能。

過去ーすでに確定して存在する時間軸
   改変は

ティンダロスー角の時間軸。
   角の時間軸における現在を改変されると、角の時間因子が変動するため、角の世界に大きな力が加わる。それこそ、ものによっては世界が滅ぶようなものもある。
   なので、湾曲した時間軸での現在改変を攻撃だと信じており、その攻撃者を抹殺しようとする。
   それが小さな改変であればその近くにいた猟犬1匹のみだったりするが、大きなものであれば、相応の対応が待っている。
   本来、角の時間軸に存在するティンダロスは湾曲した時間軸に干渉することができないが、角の世界に力が加わると、角の時間軸が歪み、湾曲した時間軸に重なり、一時的に干渉できるようになる。
   この場合、角の時間因子をもったティンダロス側は、二つの現在に存在することとなり、どちらかが傷ついても、もう片方の現在の修正力が働き、傷は負っていないことになる。
   この時、魔法的な攻撃によってのみ、(角の時間因子を持った魔法的武器によっては角の現在、湾曲した時間因子を持った魔法的武器によっては湾曲した現在で、傷を負ったという事象が確定してしまい、)ダメージを受ける。
   角の時間軸が歪みそれぞれの時間軸が重なったとき、時適切な手段を用いれば、湾曲した時間軸の存在が角の時間軸へと干渉することもできる。
   

ヨグ=ソトースー湾曲した時間軸に対して面として存在しており、時間因子を持たず、非選択時間軸含めすべての湾曲した時間軸に存在する。


親殺しのパラドックスについて
その地点から修正力が働く。
親は殺されたことになり、そこから未来が続き、現在軸では自分はいないことになる。
しかし、もし自身の時間因子を改変することでタイムスリップしているとするならば、自分はすでに過去にいたことになるので、現在軸には、年老いた自分がいる。

というか、そもそも過去に自身がいたことになると、その時点で過去改変が起きているため、世界がやばそう。
いや、もうその時点で現在と未来は不安定になり、分岐点が過去にずれ込むことで疑似的に過去が現在になる。
おそらくティンダロスの奴らが(もしかしたらygも)ぶちぎれてどうにかしに来る。
角の世界の現在に連れてかれるか、時間因子を没収されるかはたまた…。
まぁ、ろくなことにはならないのは確かだ。

イス人は既にある体を使うことにより過去改変を最小限に抑えている。
その体の記憶をたよりに、本来それがやっていたであろう行動は出来るだけなぞるようにしている。
また、近未来を変えないように立ち回ればティンダロスはやってこないことも知っている。
ボス
妖精、植物
流れ
ふらつき、意識を失う
メイドロボとの再会
マスクゲット
前回のマップをもう一回
ただし、蔦や花で豹変した森
新マップ
ボス戦

ボス戦
植物の塊
謎の生物?

本体はフェアリー
最弱テイマー ゴミ拾い
https://ncode.syosetu.com/n9629ex/332/

天才魔道具作家のスローライフ

落ちこぼれ国を出る〜実は世界で4人目の付与術師だった件について〜
https://ncode.syosetu.com/n9677fw/

ヘルモード 〜やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する〜
https://ncode.syosetu.com/n3669fw/462/

剣と魔法と学歴社会 〜前世ガリ勉だった俺は今世では風任せに生きる〜
https://ncode.syosetu.com/n7463ho/196/

元・世界1位のサブキャラ育成日記 〜廃プレイヤー、異世界を攻略中!〜
https://ncode.syosetu.com/n6774eh/360/

迷宮狂走曲〜RPG要素があるエロゲのRPG部分にドはまりしてエロそっちのけでハクスラするタイプの転生者〜
https://ncode.syosetu.com/n3675hw/40/

モブは友達が欲しい 〜やり込んだゲームのぼっちキャラに転生したら、なぜか学院で孤高の英雄になってしまった〜
https://ncode.syosetu.com/n0931ih/28/

奴隷に鍛えられる異世界生活
https://ncode.syosetu.com/n9344ea/71/

世界最速のレベルアップ 〜無能スキル【ダンジョン内転移】が覚醒した結果、俺だけダンジョンのルールに縛られず最強になった〜
https://ncode.syosetu.com/n3976gk/203/

欠落錬金術師の異世界生活 〜転生したら魔力しか取り柄がなかったので錬金術を始めました〜
https://ncode.syosetu.com/n3769ii/33/


異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜
https://ncode.syosetu.com/n9482gs/


レベル1縛りの無限絶望地獄〜敵のレベルは『1兆』以上。こっちのレベルは常に『1』。なのに、勝てなきゃ世界滅亡〜
背景 BACK GROUND
 
 
人格的特徴 PERSONALITY TRAITS
 
 
尊ぶもの IDEALS
 
 
関わり深いもの BONDS
 
 
弱味 FLAWS
 
 
その他設定など
暗殺を得意としているが、
一度ターゲットに名前を知られ、笑われてからというもの、名前にコンプレックスを持っている。
そのターゲットは今までのターゲットの中で唯一笑いながら死んだ。

その他の習熟と言語
OTHER PROFICIENCIES & LANGUAGES
盗賊道具
 
貨幣 COINS
プラチナム貨(PP)
 
金貨(GP)
100
エレクトラム貨(EP)
 
銀貨(SP)
 
銅貨(CP)
 

貨幣総重量
2
lb.
装備 EQUIPMENT
装備名重量数量
ブローチ・オブ・シールディング
 
 
ハンドクロスボウ+2
 
 
ウェポン・オヴ・ウォーニング
 
 
クロスボウのボルト+1
 
21
スタテッドレザー
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

貨幣・装備総重量
2lb.

特徴・特性 FEATURES & TRAITS
《暗視》
・120フィート

《飛行》
・歩行速度に等しい飛行能力を得る

《沈黙の翼》
・隠密技能に習熟する

《機動力》
・移動速度が10フィート増加する。
・早足を使用したなら、そのターンの間、移動困難地形を通っても移動を余計に必要としない。
・クリーチャーに対して近接攻撃を行ったならば、そのターン中宇それ以降そのクリーチャーからは機械攻撃を誘発しない。

《クロスボウの達人》
・自分が習熟しているクロスボウについて"装填"の特性を無視する
・敵対的なクリーチャーから5フィートいないにいることを理由に遠隔攻撃ロールに不利を得ることはない
・攻撃のアクションを行い、その際片手で持った武器で攻撃を行うならば、一回のボーナスアクションとしてハンドクロスボウによる攻撃を行える

《射撃の名手》
・長距離射程の攻撃を行っても、遠隔武器攻撃ロールに不利を受けない
・遠隔武器攻撃を行う際、1/2遮蔽、1/4遮蔽を無視する
・自分が習熟している遠隔武器で攻撃を行う際、ロールに―5のペナルティを受けることを選択できる。その攻撃がヒットしたら、ダメージに+10する

《追加hp》
・レベル×2のHPを得る
・レベルが上がるごとに2のHPを得る

《習熟強化》
・選んだ4つの習熟した技能の能力値判定において、習熟ボーナスは二倍になる

《急所攻撃》
・1ターンに1回、攻撃ロールに有利を得た攻撃でヒットを与えたクリーチャー1体に対して追加で2d6の追加ダメージを与えられる。
それは妙技の特性を持つ武器を使用しなければならない。
なお、
(1)目標クリーチャーにとっての敵が自分以外にも隣接している
(2)目標クリーチャーにとっての敵が無力状態でない
(3)その攻撃ロールに不利を受けていない
の3つの条件を満たしている場合、有利を得ていなくても効果を発揮できる。

《巧妙なアクション》
・自身のターンごとにボーナスアクションとして"隠れ身"、"早足"又は"離脱"のアクションを行える。

《直感回避》
・自分から見える範囲からの攻撃に対して、ヒットを与えられたなら、リアクションを持ち出で、その攻撃のダメージを半分に出来る

《身かわし》
・特定の範囲硬貨から素早く飛びのくことが出来るようになる
・敏捷力セーヴィングスローす成功すれば半分のダメージで済むような効果に晒された場合、そのセーヴィングスローに成功すれば一切ダメージを受けず、失敗しても半分のダメージで済む

《確かな技術》
・習熟ボーナスを足せる能力値判定を行うときは常に1d20ロールでの9以下の出目を10として扱うことが出来る。

《死者の囁き》
・小休憩や大休憩が終了した時はいつでも習熟がない技能か道具を一つ選び、霊の存在がその知識を共有するように習熟を得ることができる
・この特徴を使い他の習熟を得た時にこれまでの習熟は消滅する

《墓場からの嘆き》
・自分のターンで急所攻撃でダメージを与えた直後、最初の目標から30フィート以内で見ることが出来る二人目を目標にすることができる
・目標に一瞬の墓場の死者の嘆きとして急所攻撃のダイスの半分(切り上げ)をロールした値を死霊ダメージとして二人目に与えることができる
・この特徴は習熟ボーナスと等しい回数使用することができ、大休憩を終了した時にすべての使用した回数を回復することができる

《死者のしるし》
・30フィート以内で死を目撃した時のリアクションとして、何も持っていない手を開き、「魂の装身具」である小さな装身具を出現させる
・この形状はプレイヤーズハンドブックの珍品奇品の一覧をd100してDMが決定する
・この魂の装身具は最大で習熟ボーナスと等しい数だけ持つことができ、最大数持っている間は新しい魂の装身具を作ることはできない
・この装身具を持っている間は以下の恩恵を受ける

(1)装身具を所持している間、中の生命の霊的存在に生命力が強化され、死亡セーヴと耐久力セーヴに有利がつく
(2)自分のターンで急所攻撃でダメージを与えた時、所持している魂の装身具の一つを破壊することができ、破壊すると「墓場からの嘆き」の特徴を使わずにすぐにその効果を引き出すことができる
(3)アクションとしてどこででも魂の装身具の一つを破壊することができ、破壊した時に押す寝具と関連した霊に一つ質問することが出来る。霊は出現し、生前の言語で答える。ただし、例は正直になる義務はなく、自由になりたいのでDMが決定した生前の知識に基づき出来るだけ簡潔に答えるだけである

《ゴーストウォーク》
・ボーナスアクションを使用し、10分間霊体の形状を取ることが出来る
・霊体状態は再びボーナスアクションを使用することで終了することが出来る
・この形状では以下の恩恵を得る
(1)飛行移動速度10フィートを得て、空中を漂うことが出来る
(2)自分への攻撃に対して不利を付けることが出来る
(3)物体や生物を移動困難な地形として通過することが出来るが、その中でターンが終了すると1d10の力場ダメージを受ける
・この特徴を再び使用するには魂の装身具を一つ破壊するか、大休憩を取る必要がある

《ブローチ・オブ・シールディング》
・力場ダメージに対する抵抗を得る
・マジックミサイル呪文によるダメージに完全耐性を得る

《ウェポン・オヴ・ウォーニング》
・イニシアチブロールに有利を得る
・自分、および自分から30フィート以内にいる味方全員は非魔法の睡眠以外の理由で無力状態になっている場合を除き、不意を討たれることが無い
・眠っているものを起こすことが出来る

呪文 SPELLS

呪文発動クラス
SPELLCASTING CLASS
 
呪文発動能力値
SPELLCASTING ABILITY
【筋】
対呪文セーヴ難易度
SPELLSAVE DC
 
呪文攻撃ボーナス
SPELLATTACK BONUS
 

0レベル初級呪文 CANTRIP
呪文名
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
1レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
4レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
5レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
6レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
7レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
8レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット
 
 
 
 
 
 
 
 
 
9レベル呪文
準備
済み
スロット合計
 
使用済みスロット