兵士/補給係

力自慢で者と打ち壊すのが好き。
問題はストレート正面突破。

民族

肩を並べて戦った戦友だというのは、戦友のためなら死ねるということだ。

戦で失敗し、多くが死んだ。その失態を隠しておくためならなんでもする。

フォーゴトンレルム北西に広がる荒涼とした大地、ラシェメン。その過酷な自然の中、彼女は小さな村で両親と妹モラナとともに暮らしていた。生活は決して裕福ではなかったが、友人には恵まれ、困難な環境の中でも、笑い声が絶えない満ち足りた日々を送っていたのだ。

しかし、その平穏に変化が訪れたのは、幼馴染のウラティスラフから一通の手紙が届いた日だった。手紙には、首都イミルマーへ上京し、ラシェメン軍に入隊した彼の成功が綴られていた。ウラティスラフは幼い頃から正義感が強かったが、彼の華奢な体つきでは力比べで彼女に勝てたことは一度もなかった。そんな彼が、軍で士官にまで昇進し、手紙を送る余裕さえ持つ姿が彼女に強い影響を与えた。富と名誉を手に入れるため、14歳の若さで家族の反対を押し切り、彼女は故郷を後にした。

訓練兵だった彼女は、初陣に補給兵として参加した。後方にいる間は戦況を知ることもなく、ただ指示された物資を運ぶだけだった。だが、前線にたどり着いた瞬間、彼女の目に飛び込んできたのは、壮絶な地獄絵図だった。荒れ狂う戦闘の光景、耳をつんざく叫び声、そして鼻を突く血と焦げた肉の匂いーーそのすべてが彼女の心を押しつぶした。
身体が震え、冷たい汗が背中を伝う。息を整える間もなく、彼女は恐怖に突き動かされるようにその場から逃げ出してしまった。そして、ただひたすらに走り続けた彼女がたどり着いたのは、立ち入りを禁じられたアーリング森だった。

しかし、アーリング森は侵入者を決して許さない。彼女が足を踏み入れたその瞬間、森は牙を剥いた。枝や蔦が意思を持つように絡みつき、逃げ場のない彼女を締め上げる。必死にもがく彼女の前に現れたのは、この森を支配する上級魔女レイディ・ラミーナだった。冷酷な視線で彼女を見下ろすその姿には、絶対的な威圧感があった。

「森を汚す愚か者が……貴様には相応の罰を与えねばなるまい。」

レイディが紡ぐ呪文の言葉は空気を震わせ、全身に耐え難い痛みが走る。命の灯火さえ消えかけたそのとき、ティタニアが現れた。眩い光の中から姿を現したフェイの女王は、その威厳だけで森を静寂に包み込む。

「それ以上はやめておけ、ラミーナ。彼女はまだ使える。」

彼女の威厳は森全体を静寂に包み、ラミーナでさえも詠唱を中断するほかなかった。気に食わない様子で舌打ちをしながらラミーナが去ると、力尽きた彼女を見下ろしながら、ティタニアは微笑む。

「命が惜しいか、人間よ？ならば私と契約を結べ。お前に力を与える代わり、私を森の外へ解放するのだ。」

ティタニアは古の力によって森に縛られていた。彼女にとって、この契約は長き呪縛から逃れる唯一の手段だった。死の淵に追い詰められた彼女に拒む余地はなかった。震える声で契約を受け入れると、ティタニアは満足そうに頷き、フェイの力をその身に注ぎ込んだ。傷は瞬く間に癒え、体内を満たす力がこれまでとは異なる存在に変わっていく感覚があった。しかし、呪いは完全に解けたわけではなかった。筋力は著しく衰え、黒髪と瞳がアメジスト色に変わるという烙印は、彼女に刻まれたままだった。

彼女は軍には戻らなかった。過去の罪や戦友への償いは、自分の意思で成し遂げるべきだと感じたのだ。彼女が向かうのは、軍隊という枠に縛られない新たな道。自らの弱さと向き合い、同時に己の力を試すため、彼女は一人、冒険者として歩み出した。

その姿はかつての少女ではなく、過去の罪を背負いながらも前へ進む、一人の戦士だった。