ウッドエルフの里を飛び出した若きエルフの弓使い。

好奇心旺盛で面白いと思った物事には積極的に関わっていく。とりわけ善人というわけでもないが、悪人でもない。基本的に興味の湧くもの、自分にとって有益なものに関しては目がない。損得と興味関心で動き、少々皮肉屋で斜にかまえた面はあるが、人との関わりは大切にしている。

刺激。刺激を求めるためなら多少の危険もいとわない。かといって自分に損しかない場合は冷静な判断を下す。

弓術。１００年以上にわたり訓練を積み続けた彼にとって、自分の弓は最早体の一部だ。手足のように自在に操り、はるか先の獲物も一撃のもと葬る。

冷徹で判断力はあるのだが、刺激的な出来事には自身のリスクを考えずに行動する。当然報酬も考慮に入れてはいるが、そのためなら仲間を危険にさらす事も厭わない。

彼は飽き飽きしていた。フォーゴトン・レルムの辺境の森…。来る日も来る日も森の里で狩りをし、ただ淡々と生活をする日々。話をすると言ってもエルフだけだ。この里はよそ者に寛容ではない。ヒューマンもハーフリングもドワーフも…彼はエルフの工芸品の取引以外で目にしたことが無かった。当然会話も商談以外にすることはない。外の世界はどうなっているのだろうか？ウッドエルフたちの中でも人一倍好奇心と探求心の強い彼の性格は異質であった。「なんで外に出ようとしない？なんで異種族ともっと交流しようとしない？」そんな問いを投げかけてみても返ってくる答えは皆同様に「この里で静かに暮らすのが我々ウッドエルフだよ…」と言われるだけであった。７００年以上の寿命を持つエルフたちにとって、この悠然とした…あまりに緩慢な日々は当たり前の日常なのだ。あまりに長い…漫然と続くその当たり前が彼にとって苦痛であった。エルフとは元来そういう気質の種族であったが、彼だけは違ったのだ。エルフとして生を受けてから悠に１００と３０年…。とはいってもエルフとしては若輩者の彼だったが、もう限界だった。「退屈だ！外界を旅して知見を広げたい！」そんな思いが彼の中で燻り続ける。ある日彼は森の里で成人を迎えることになった。与えられた名前は【ディーン】。それだけは何となく気に入っていた。「ディーンか…悪くない…まぁ…もうこの里に用はないがな…今日でこの場所ともおさらばさ…」そう独り言ちる。成人の儀式の最中…宴もたけなわで皆が眠りにつく頃合いを見計らって、彼はかねてよりの計画を実行に移す。もう何百万回と繰り返し撃ち続けてきた先祖伝来の弓。手にしっくりとなじむエルフ特有の繊細かつ丈夫な造りの弓をひっつかみ、自室の天井裏に隠してある何年も人目を忍んで準備してきた旅の荷物を背負う。そして爪に火を点すような生活をしながら貯めに貯めた金貨を手に、彼は寝静まる皆を尻目に里を離れる。「へへっ…うまくいった…もうこんなところはうんざりだ…精々あと数百年の退屈を楽しむんだな…」そう皮肉気にほくそ笑みながら里を出る。森の外には平原が広がっていた。満月。空は晴れ渡って星々がきらめいている。淡い月光に照らされながら風に揺れる草木を見て彼はわくわくしていた。遠くに見える山々、流れる川、街道。高揚する気分を抑えながら辺りを注意深く見回す。エルフは夜目が利く。近くに村があるのだろうか？街道沿いに粗末な看板が見える。彼は用意した松明に火をともしながら「ひとまずはここを目指すか…」そう思い歩を進める。彼の波乱と刺激に満ちた冒険の旅はここから始まるのだ…。

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