両親の顔も知らず、3つ下の弟ダナンとたった二人だけの家族として幼少期を過ごした。体の弱いダナンを支えるべく、村に唯一の魔術師であった魔術師マルタに師事し、魔術を学んだ。
ある日、とある冒険者パーティが村を訪れた際に、病を持ち込んだ。瞬く間に広がった病魔は、ダナンにも牙を剥いた。他に罹患していた村人は回復したものの、ダナンは一向に治る気配がない。それでも唯一の家族のために看病を続けてきたが、ある日ダナンは治る見込みもなく、殺してほしいとディアナへ頼んだ。

ディアナは咽び泣きながらダナンを殺し、その血肉を体内に取り込まんと、その肉を食らった。

師たるマルタは事の顛末を始終すべて聞き、ディアナに村を出るように言い聞かせた。その際の呪文書、ポーチは彼なりの餞別だったのかもしれない。
マルタの言葉通りに、また家族を食らった狂人とされた居心地の悪さから、ディアナは村を出て冒険者となった。

この時、齢にして19の時であった。

退廃的かつ破滅的な物言いをよくする。そして、酒などの体に悪いものをよく好む。
それは、過去に大切なものを失ったことによる自暴自棄で、それが癖になっているのである。
自己紹介も、一言目には「巷では弟喰らいと呼ばれている」とのたまうほどで、人間関係すら諦めている節もある。

ただし、それでも親しい関係にある者には無上の献身を見せる。ある意味、普段の振る舞いで付き合う人間をふるいにかけているとも言える。それでいながら行動を鼻にかけることもない。荘厳な建物における柱のように、縁の下を支えることに徹しているのだ。

酒のうまさは、生きる者の持つ三つの欲求の立場を危うくするほど官能的である。
それは、飲んでいる間には嫌なことなど忘れることができるからだ。弟の喉元にダガーを突き立てたあの感覚も、酒を飲んでいる間は気にしたことがない（と思っている）。
刹那的で、退廃的で、それでも輝いている時間。いつか来る終りを手繰り寄せるようなことがあっても、酒という甘露に酔いしれる時間は何物にも代えがたい。

(1)この呪文書は、師であるマルタから送られたものだ。まだまだ内容の半分も理解できていないが、それでも家族以外の大切な人間関係を想起させる、かつて自分の目指した到達点を示す常夜灯なのだ
(2)いつも持ち物の中には、ダガーを忍ばせている。古びたダガーだが、その刃先にこびり付いた錆は弟ダナンの血糊が乾いたものだ。

のらりくらりと躱すを是とする性格もあってか、正反対のストレートな表現に非常に弱い。
かつて裏切られたこともあり、策を弄しない人間とのやり取りには常人の十倍くらいはやきもきする。