オーク族の兵士。次期族長候補。

問題は正面から突破する。単純直截な手段こそが成功への一番の近道だ。

当然力。戦でも人生でも強い者が勝つ。

名誉を命と心得ている。

母が怖い

　オークの小さな一族の族長の父とヒューマンの母の間に生まれた。父から母は死んだとだけ伝えられていた。しかし母がいなくても幸せだった。
　彼女の部族は何よりも力、そして武勇を重んじる。頭を使うことは全てドルイドの家系の者に丸投げをしている。この部族で生まれ育った彼女はやはり所謂『脳筋』である。
　その部族では近隣の村と対立していることもあり、オーク以外に対しては基本的にいい顔をしていなかった。
　そんなある日、突如あらわれたヒューマンの女に完膚なきまでにボコボコにされた。そしてその女は筋骨隆々な彼女の首根っこを掴み族長の前に放り投げ、流暢なオーク語で話し始めた。
「よう、久しぶりだな。ちょっと老けたんじゃないか？」
「随分と手荒い挨拶だな。老けたのはお互い様だろう」
「違いないねぇ。こんなになったんだから積もる話もあるが……とりあえずこいつは借りてくぞ」
　この部族では1対1の戦いに負けた者に権利はない。しかし何も聞かずにただ連れていかれるだけでは癪だ。
「貴様……何者だ」
　その問いに対して女はふっと笑う。代わりに族長が苦い顔をしてこう答えた。
「お前の母だ」
　
　かくして人の郷へと降り立った。そして対立する者たち――オーク以外の種族のことだ――と協力して暮らすよう命じられた。突然現れたこの『母』と名乗る人間によって幸せとは程遠いところに来てしまった。その『母』はこう告げた。
「食い扶持は自分で稼げ」